3、児童虐待はどのように発覚するか
児童虐待が発覚するきっかけの多くは「通告」です。
児童虐待防止法では、児童虐待を受けたと思われる(疑わしいだけでいいのです。実際に虐待が行われているかは問題ではありません)児童を発見した者は、児童相談所等(※)に通告しなければならないとされています(同法第6条第1項)。
また、学校、病院その他児童の福祉に職務上関係のある者は児童の虐待については早期発見に努める他児童虐待を防止する立場にあるため(同法第5条)、これらの機関からの通告もなされます。
※「児童相談所等」とは、地域の児童委員、または直接市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所をさします。
(1)近所の人から
平成27年からは「189」ダイヤルが開始され、「189」にダイヤルすれば児童相談所につながります。
これにより、近所で定常的に子どもの泣き声が聞こえたり、保護者の怒鳴り声などが聞こえた場合には、近所の人もすぐ通告することができるようになりました。
(2)幼稚園や保育園、学校から
幼稚園や保育園、学校は、体育での着替えや身体検査など子どもの身体を教員がチェックする機会があります。
上記の通り、これらの機関は児童の虐待について予防、防止する立場にありますので、発見すれば直ちに通告することになります。
(3)病院から
医師や看護師等は、直接身体に関わる業務であることからもっとも児童虐待を発見しやすい立場といっても過言ではありません。
病院も児童の虐待について予防、防止する立場にありますので、発見すれば直ちに通告することになります。
(4)家族から
同居の親や配偶者などが子どもへの虐待をみかねて通告することもあります。
通告した家族に、批判的な言葉や責めるような言葉がかけられることはありません。安心して通告してください。
(5)子ども自身から
子どもにコミュニケーション能力があれば、学校でスクールカウンセラーなどに虐待の相談をするケースもあります。
子どもたち自身から相談できる場所が、昨今では設けられているのです。
4、児童虐待で逮捕されることはあるのか
児童虐待で逮捕されるケースに関係する法律は、主に児童福祉法、児童虐待防止法、刑法の3つです。
(1) 児童福祉法に基づく場合
児童福祉法では、児童に対する禁止行為が規定されており(同法第34条第1項各号)、これに違反した場合の罰則が設けられています(同法第60条)。
禁止行為の中でも検挙数が多いのは、「児童に淫行させる行為」(同法第34条第1項第6号)です。
罰則は、10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又はこれらの併科です(同法第60条第1項)。
保護者が児童に淫行させる行為は、児童福祉法違反の容疑で逮捕される可能性があります。
(2) 児童虐待防止法に基づく場合
児童虐待防止法は児童虐待について規定する法律であるものの、児童虐待行為自体への罰則は設けられていません。
罰則規定は1つ(児童虐待防止法第17条)で「接近禁止命令」に違反した場合に処罰されます。
「接近禁止命令」とは、児童虐待を受け施設に入所している子供と面会等をすることを制限されている保護者に対しつきまとい等の行為を禁止する命令のことです(児童虐待防止法第12条の4)。
この「接近禁止命令」に違反した場合は、児童虐待防止法違反の容疑で逮捕される可能性があります。
(3)刑法
児童虐待行為の多くは、刑法が規定する犯罪行為に該当します。
親権者であることを理由として刑法の暴行罪等の責任を免れることはありません(児童虐待防止法第14条第2項)。
「しつけ」と称して行われるものであっても、親権者は、その適切な行使に配慮しなければならないとされています(同法同条第1項)。
したがって、親権者が子供に暴力をふるえば暴行罪、傷害罪などの刑法上の罪の容疑で逮捕される可能性があります。
(親権の行使に関する配慮等)
第十四条 児童の親権を行う者は、児童のしつけに際して、その適切な行使に配慮しなければならない。
2 児童の親権を行う者は、児童虐待に係る暴行罪、傷害罪その他の犯罪について、当該児童の親権を行う者であることを理由として、その責めを免れることはない。
配信: LEGAL MALL