5、児童虐待で逮捕されたら起訴されるの?
基本的には、逮捕されると警察や検察により取り調べが行われ、必要に応じて検察により起訴されることになります。
逮捕後の詳しい流れについてはこちらをご覧ください。
起訴されれば裁判となり、実刑を受ける可能性があります(前科もつきます)。
懲役刑の実刑となれば、自宅を不在とする期間が長期になる場合もあるでしょう。
6、逮捕・起訴以外の児童虐待者に起こり得ること
児童虐待をした保護者が逮捕される一方で、児童相談所が子どもを保護するということも起こり得ます。
児童相談所が子どもを保護している間、児童相談所は保護者に対し子育ての指導等を行い、健全な子育てに戻るための支援をしていきますが、その間、子どもの利益にとってよくないと判断された場合は、子どもと会うこと、電話で話すこと、などについて制限を設けられることもあります。
以下、ご説明していきます。
(1) 子どもの保護
児童相談所長及び都道府県知事は、その判断によって、子どもを一時保護することができます(児童福祉法第33条・児童虐待防止法第8条第2項)。
両親そろって逮捕され子どもの世話をする者がいなくなる場合もこの一時保護がなされます。
一時保護の期間は原則2ヶ月ですが、延長されることもあります(児童福祉法第33条第3項)。
また、児童相談所長は、通告を受けた場合都道府県知事にその報告をするのですが(児童福祉法第26条第1項第1号)、報告を受けた都道府県は、子どもを児童養護施設等に入所させる措置をとることができるとされています(同法第27条第1項第3号)。
もし、この入所に保護者が同意しなかったとしても、必要に応じ、都道府県は、家庭裁判所の許可を得て子どもを児童養護施設等に入所させることができます(同法第28条第1項)。
家庭裁判所の許可を得た入所については、その期間は2年を超えないことが原則ですが、子どもの福祉の観点から期間は更新されることがあります(同法第28条第2項)。
(2) 面会・通信制限
これらの一時保護や入所措置がとられた場合、児童相談所長及び入所施設の長は、児童虐待を行った保護者に対し、児童との面会・通信の全部又は一部を制限することができます(児童虐待防止法第12条第1項)。
面会の制限とは、子どものいる場所に行って会ってはいけないということです。
通信の制限とは、メール、電話、ファックス、手紙、宅配などをしてはならないということです。
児童福祉法第33条の一時保護、および家庭裁判所の許可を得て入所したケースでは、虐待の再発や勝手な連れ戻し等のおそれがある場合、入所施設の住所すら保護者に明らかにしないこともできます(児童虐待防止法第12条第3項)。
面会・通信制限は、必要がなければ速やかに解除され、少なくとも6ヶ月ごとに制限の必要性について検討されます。
(3) 接近禁止
家庭裁判所の許可を得て入所となったケース(児童福祉法第28条第1項)で面会・通信の全部が制限されている保護者は、児童への「接近」までも禁止されることがあります(児童虐待防止法第12条の4第1項)。
「接近」とは、声をかけたり会ったりする「手前」の行為です。
つまり、遠くから見るだけ、子どもの住んでいる場所の空気に触れようと近隣をはいかいするだけ、などの行為です。
この禁止は、原則6ヶ月以下の期間であり、接近禁止の理由がなくなったことを主張することで、期間途中で取り消しを求めることも可能です。
(4) 親権停止
親権を一定期間停止させる制度があります。
これは、民法の規定です(民法第834条の2)。
申し立てができるのは、子どもの親族、検察官などで、家庭裁判所に対して行います。また、子ども本人からの申し立ても可能です。
基本的に、児童虐待への解決方法は家庭への支援がメインです。
支援の1つとして行われる子どもの保護や面会等の制限では足りず、親権まで停止するケースは、児童虐待の中でも限られているといえます。
13万件に上る相談件数の中でも、家庭裁判所での新受件数は約200件(2017年)です。
親権を停止する主なケースは次のようなケースです。
① 医療ネグレクト
子どもに必要とされる医療行為を行わず、子どもの命に危険があるケースです。
宗教などの理由により手術を拒むケースも当てはまります。
② 財産管理権の濫用
施設入所中の子どもに多額の保険金が入ったことを理由に急に引き取りを希望してくる親など、保護者の子どもの財産管理に問題がある場合には親権の停止がなされることがあります。
配信: LEGAL MALL