7、児童虐待の解決に欠かせない児童相談所
児童虐待に対する通告先(189ダイヤルで繋がる先)は、児童相談所です。
仮に警察(110ダイヤル)に通報されたとしても、警察は児童相談所に連携します。
これからも続く育児の中では、家族全体として虐待の原因を解決していくことが重要です。
(1)児童相談所による対応
児童虐待が、家庭内または家庭外からの通告その他の方法により発覚した場合、児童相談所が動きます。
児童虐待における児童相談所の大きな役割は「家庭を支援すること」です。
児童相談所ごとにその対応に差が生じないよう、厚生労働省では家庭支援のガイドラインも出しています。
児童相談所は家庭内の事情を把握した上で、まず、子どもが在宅のまま対応するか、保護が必要かを検討します。
(2)子どもが在宅のまま対応するケース
子どもの成長には安定した環境が必要であり、自宅以外に身を置くことは基本的には望ましくありません。
また、子どもは家庭的な環境で育つことが何よりも良いとされており、親に育てられる権利を持っています。
そのため、児童相談所による支援は、在宅支援が基本です。
児童相談所は、保護者に向けて、カウンセリングを行い、生活改善策や子どもとの接し方などを指導していきます。
(3)子どもを保護するケース
ただし、子どもの安全などの総合的な判断によっては、児童相談所は、その判断により子どもを保護(一時保護)します。
子どもの保護は、あくまでも「家庭支援」の1つです。
子どもを親から取り上げるということではありません。
親の精神状態、経済状態などを落ち着かせ、最終的には落ち着いた家庭生活を送るようになることを目指します。
(4)児童相談所は警察へ連絡するの?
児童相談所長は、必要に応じて警察署長に援助を求めることができるとされていますが(児童虐待方第10条第1項、第2項)、実際、児童相談所から警察へ連携されることはあまりないと言われています。
これは、児童相談所は家庭支援のための機関であるため、警察に情報を入れることが望ましいかの判断が難しいという理由があるようです。
ただ、近年の虐待死の痛ましい事件を契機として、愛知県など自治体によっては全件警察と連携を図ることを始めたところもあります。
一方、東京都などは、上記の理由からそれを反対していたりもします。
虐待をなくすこと、そして家庭生活の正常化を支援すること、この両立を図るべく、現在行政はさまざまな方法を模索している最中です。
(5) 児童相談所は敵ではない?
児童相談所は、「実家のような存在であるべき」であるとされ、家庭からの話を傾聴し、家庭の精神的な支えとなることが理想とされています。
また、家庭内虐待についての第一次的機関として、専門的に実績と研究を重ねています。
そういった意味では、児童相談所は、家庭の敵ではなく味方であると考えることもできるでしょう。
たとえ、子どもを施設入所させる提案をしてきたとしても、また、警察との連携を図ったとしても、それは、子どものみならず、保護者自身と家庭全体が良い方向へいくことを目的としていると考えられます。
他方で、児童相談所であっても、家庭内の状況について全てを知っているわけではなく、近所の人や、出来事についてうまく言葉で表現できない児童の話をもとに事実関係を把握しています。
そういった意味では、児童相談所でも真実を把握できないこともあり、保護者にとっては敵ともいえる存在になってしまうこともあります。
もし、児童相談所が困るようなことばかりを言ってくる、児童相談所では解決にならないなど、児童相談所の対応にお困りの際は、ぜひ弁護士にご相談ください。
ご家庭と児童相談所の話し合いがよりスムースにいくよう、最善を尽くします。
8、虐待のない家庭にするには
(1)カウンセリングを受けてみる
児童虐待専門の加害者用カウンセリングを受けることは虐待を止めるきっかけになります。
専門のカウンセリングでは、虐待の実態を認識し、同じことを繰り返さないためのプログラムが組まれています。
同時に虐待の被害者に対するカウンセリングも必要になるでしょう。
子どもの年齢にもよりますが、小学生以上なら必要になるケースが多いかもしれません。
どこでカウンセリングを受ければいいのかがわからない場合には、児童虐待防止協会の子どもの虐待ホットラインに電話してみるといいでしょう。一人で悩まなくてもいいのです。
専門のスタッフが匿名で虐待についての悩みを聞いてくれます。
(2)児童相談所に相談する
これまでお伝えしてきたように、児童相談所は家庭の味方となり得ます。
虐待の事実を咎めるのではなく、お子さん、そして家庭全体にとってこれからどうしていくことが良いのか、具体的に共に考える機関です。
できるなら第三者からの通告によって発覚されるのではなく、自身から解決に踏み出してみましょう。
9、逮捕されそう、または逮捕されたときは
もしも家族が逮捕された、もしくは逮捕されそうな場合には、迷わず児童虐待問題の経験が豊富な弁護士に相談してください。
逮捕から72時間は家族との面会はできませんが、弁護士だけは面会ができます。
ご家族の様子その他、お伝えしたいことは代わりにお伝えすることができます。
そして何より、今後どのように対応すべきか、法的アドバイスをすることができます。
また、逮捕されてしまうと、生活が一変してしまいます。
職場への対応その他、逮捕されたご家族に不利益が生じないよう尽力します。
虐待をしてしまっていた場合には、二度と繰り返さない方法を一緒に考えられますし、虐待をしていないのに逮捕されてしまった場合には、無実を明らかにしていくための対応をしていきます。
まとめ
児童虐待は、理由はなんであれ、あってはならないことです。
身体的・精神的暴力は特に、しつけとしての即効性を感じる方も多いかもしれません。
しかし、第三者が虐待の可能性を感じるまでに至っている場合には、今一度その原因を考えてみてください。
児童虐待の原因が子どもにあるケース(癇癪などを起こすため育てにくいなど)もありますが、それと同時に、親自身の問題(ストレス過多など)や家庭環境(配偶者とうまくいっていないなど)が複雑に絡み合っているケースが一般的です。
解決するためには、どうぞ自分一人で悩まず、弁護士を含めた専門機関に相談してみましょう。
また、児童虐待の事案については、児童の怪我などの結果が重大であることも多いことから、真実は虐待をしていなくても捜査機関が捜査を進めてしまうこともありますので、お子さまが怪我などをされたときには、慎重に対応していかなければなりません。
あなたの悩みが一刻も早く解決されること、そしてお子さまが健やかに成長されていくことを願っています。
監修者:萩原 達也弁護士
ベリーベスト法律事務所、代表弁護士の萩原 達也です。
国内最大級の拠点数を誇り、クオリティーの高いリーガルサービスを、日本全国津々浦々にて提供することをモットーにしています。
また、所属する中国、アメリカをはじめとする海外の弁護士資格保有者や、世界各国の有力な専門家とのネットワークを生かしてボーダレスに問題解決を行うことができることも当事務所の大きな特徴です。
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