●たいていのママは過保護=悪いことと認識している
「今のお母さん方に足りないこと…それはズバリ! “勇気”だと思います。“過保護は良くないこと”と頭では理解しているけど、つい親のペースで子どもとやりとりをしてしまう“という親御さんはとても多いです。もちろん、子どもたちが社会のルールを守れるように最低限のサポートや先回りの対応は必要です。ですが、親御さんの頭のなかに、”人は自らの経験でしか学びを得られない“ということがしっかりとインプットされていれば、勇気を振り絞って子どもにある程度のことは任せられるはずです」(水野氏 以下同)
それでは、親のいきすぎた過保護や過干渉が、やがて社会に出て行くわが子に与える弊害はあるのだろうか。
「『ペアレンツキャンプ』に相談にいらっしゃるご家庭のほとんどが、過保護・過干渉な子育てをしてきたといっても過言ではありません。親の過保護によって、子どもたちは年齢相応の自立心を育くむことができず、“折れない心”が育成されないまま体だけが成長してしまいます。そのアンバランスさが原因で不登校に発展してしまうケースは少なくありません。不登校経験者がそのまま引きこもりに発展してしまうケースもあります。きっかけは友人関係や学業関係が多いですが、根本的な原因には、本人の性格傾向に起因することが散見されるのです。さらに言えば、親の過保護が原因で成功体験や失敗体験が不足していたり、コミュニケーション能力が低いと、会社組織の中で周りが思う以上にストレスを抱えてしまい、社会人になってから精神を病んでしまう場合もあります」
●過保護の境界線とは?
ママたちのなかには、“自分が過保護であること”自体に気づいていない人も多くいる。それでは、行き過ぎた過保護の基準はどこにあるのだろうか。
「過保護という言葉は、“過ぎる”という言葉と“保護”という言葉から成り立っています。子どもを育てる上で、親が守ってあげなければならないことはたくさんありますし、それはむしろ必要なことだと言えます。私が考える過保護とは、例えば、親がキャンディーの包みを開け、子どもの口までキャンディーを運んであげるような状態。子どもが自ら包みを開けてキャンディーを口に含むことができるのに、わざわざ親がやってあげるような子育てが、過保護と言えるのではないでしょうか。そう考えると、自ずと親が手を差し伸べていい範囲が見えてくると思います」
最近では、親がわが子の就職説明会に参加したり、息子や娘の婚活パーティーに出席する現象も見受けられるが…。
「親が子どもの代わりに会社に休む連絡をしたり、説明会に出席するのは、ここ最近では珍しいことではなくなってきました。私の時代は、大学の卒業式に親の姿はほとんどありませんでしたが、昨今では、まるで親自身が主役であるかのような景色も見受けられます。また最近の教育を見ていると、家庭のみならず、学校自体が過保護になっていると感じます。例えば、教育の最高学府と言われた大学の先生が教え子にモーニングコールをしたり、大学側が学生の獲得の為に手厚いサポートを展開しているのです。本来大学生ともなれば、こうした学校のサポートは必要ないはず。将来を見据え、まずは“自分で考えて行動できる大学生や大人に成長させる…”これこそ、今の親御さんに問われる家庭力なのではないでしょうか」
児童期の子育てでは、魚を釣ってあげるのではなく、魚の釣り方を教えてあげることが大切。過保護の定義をしっかりと頭に入れ、勇気を持って子どもの力を信じ、自分でやれることは極力子ども自身にやらせる。その経験がやがてはわが子の糧となり、ジャングルの様な社会に出たとき、闘い、乗り越える力となるのだ!
(取材・文/蓮池由美子)