突然の余命1カ月宣告…「もう心残りはない」と話す父をみとるまで【体験談】

突然の余命1カ月宣告…「もう心残りはない」と話す父をみとるまで【体験談】

私の父が肝臓がんだとわかったのは、体調がかなり悪化していたときでした。今まで大きな病気をせずに元気だった父が、急に痩せ、歩くことも困難になってしまったのです。ここでは、父をみとるまでの2カ月の介護の話をお伝えします。

変わり果てた父との再会

実家と私の家は飛行機が必要な距離で、最後に父に会ったのは2019年でした。コロナ禍もあり、電話でのやりとりはしていたものの、なかなか実家には帰れていなかったのです。

2021年の7月、父の調子が悪いと母から連絡が入りました。今まで食欲不振や吐き気という症状があったものの、病院嫌いの父は断固として病院に行かなかったのです。父を説得するために、私は実家に戻り一緒に病院に行きました。父は見たことのないほどに痩せこけていて、「これはただごとじゃない」と感じたのです。

病院に行き、さまざまな検査を経てわかったのは、ステージ4の肝臓がんという診断。手の施しようのないほどがんが進行しており、全身に転移しているということでした。余命はあと1カ月。なぜもっと早く病院に連れて行かなかったのか、母を責めてしまいました。医療の力でできることは、痛みを取り除くことのみ。これから私たちの看護が始まりました。

看護にあたった2カ月間

病院は感染症対策のために自由に出入りができない時期でした。腹水がたまって、体調も悪かったので2週間ほど入院していましたが、病院嫌いの父は「早く退院したい」と常々言っていたため、自宅で緩和ケアができないかどうかを調べ、退院させました。最後くらい自宅で過ごさせてあげたいと思ったのです。

病院では薬の影響からか、せん妄(注意や理解、記憶などの機能が低下すること)があり、会えても暴言を吐かれてつらい気持ちになりました。「自宅看護はどうなってしまうのだろうか」という不安はありましたが、訪問看護のスタッフやケアマネージャー、緩和ケア科の先生が連携してくれたので、看護未経験の私と母でもなんとか対応できたと思います。密に連絡をくださって、心配なことはいつでも相談できたので本当にありがたかったです。

自宅に帰ってきた父は、入院時とは打って変わって穏やかになり、看護師や主治医の訪問診療を受けて、それから2カ月家族で過ごせました。ほとんど寝て過ごしましたが、起きているときにはしっかり会話もでき、父は「もう心残りはない」と言っていました。

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