実際に里親になるにはどうすれば良いのか。『うちの子になりなよ』(イースト・プレス)で里親体験を描いた漫画家の古泉智浩さんは言う。
「里親になりたい人は、まず地域の児童相談所に相談に行きます。民間の斡旋業者もありますが、基本的に地域の児童相談所に登録した人が対象となっています」(古泉さん 以下同)
里親制度はあくまで子ども中心のものであり、性別や年齢など、親の希望によって子どもを選ぶことはできない。基本的に、子どもにとって良い条件となる親を行政が選ぶ仕組みだという。
また、里親希望の登録をするには、研修を受けて「里親認定」を受けることが必要になる。研修の頻度は地域によって様々だそう。
「僕の場合、長い不妊治療経験の末で焦っていたので、研修は半年に一度しかないと知り、『そんなに待たなきゃいけないのか』とイライラしました(苦笑)」
●里親研修で行うのは座学、施設研修、自宅調査など
里親には、親が亡くなって親戚が預かる「親戚里親」や、一軒家で4~5人の里子を養育する「グループホーム」、障害児を養育する「専門里親」のほか、週末だけ預かる「週末里親」など、様々なものがあるそう。
研修の期間や内容は、地域や里親の種類によって異なる。古泉さんの場合は月1回ビデオや資料を見たり、大学の先生など専門家の話を聞いたりという「座学」を行った後、児童養護施設で2日間小学校低学年の子どもたちと一緒に過ごす研修を受けたそうだ。
「そして、施設研修も終えると、自宅調査です。その家が子どもを預かるのに適しているか、実際に職員さんが来訪して実地調査するのです」
●里親認定を待つ間にかかってきた突然の電話
里親になれるのはだいぶ先のことだろうと、民間への足掛かりのつもりで児童相談所に相談した古泉さん。しかし、研修を終えて認定を待つ間に、児童相談所からの突然の電話があった。予定日よりだいぶ早く生まれて新生児特定集中治療室(NICU)にずっといる男の子の赤ちゃんを預かってほしいという話だ。
「妻は、何らかの障害があったときにちゃんと育てられるかという不安に駆られていました。でも、僕はもう障害があってもかまわないと思い、全力で面倒を見るしかないと話し合い、預からせてもらうことになったのです」
里親認定から何年も待っていても、里子を預かれない家庭もある。マッチングは行政が行うが、その条件は明らかになっていないため、巡りあわせをひたすら待つ、あるいは、ある程度で諦めて民間斡旋業者に相談するほうが良い場合もある。
「ちなみに、『里親には年齢制限がある』とか『共働きは不可』と言われることもありますが、地域によって、また、民間業者などによって条件は異なります。僕の住む新潟は、児童相談所の里親への委託率が全国一で、50%近くにのぼるそうです。本気で里子を預かることを考える場合、里親制度に熱心な地域に引っ越すこともひとつかと思います」
里親制度に少しでも関心がある人は、まずは地域の児童相談所に相談してみること。様々な里親制度があるので、話だけでも聞いてみると良いかも。
(田幸和歌子+ノオト)