5歳の子どもがいるAさんは、下の階の人から生活音によるクレームを受けたことがあるとか。恐怖を感じたという下の階の人の行動とは? Aさんに話を聞いた。
●音の感じ方の違いから、対応が遅れる
「子どもが生まれたのをきっかけに5年前に現在のマンションを購入しました。3年前頃から下の階に住む夫婦から管理会社を通して、生活音に関するクレームが来るようになりました」(Aさん 以下同)
同じフロアに住むほかの世帯に聞くと、同様の苦情があったという。
「おもな苦情の内容は、足音やドアの開閉音でした。私自身、自分たちの上の階の人の生活音、子どもが走っている音、洗濯機を使う音などが聞こえていましたが、まったく気にならない範囲のものでした」
Aさんは、何度か謝罪に行っていた。ただ、普通の生活をしていて迷惑をかけているという感覚がなかったため、明らかな防音対策をすることが遅れてしまった。これがトラブル悪化の原因ではと続ける。
●苦情の訴え方が変化して、暴力的に…
下の階の住人が直接苦情を言いに来たのは、昨年のことだという。朝の4時に男性がチャイムを鳴らしてきた。
「インターフォン越しに苦情を聞きましたが、ちょっと非常識な時間だと感じました。明朝に改めて夫婦で話をしに来て女性が夜間に訪問したことをわびたため、このときは、今後も話し合いをしていくことが必要だろう、とくらいに思っていました」
その後も変化があった。夕方にAさんが生協の宅配物を自宅に入れながら子どもと話をしていたところ、下の階から声を張り上げて「うるさいぞ」と怒鳴るように。毎朝の出勤時には、下の階で待ち構えていて、エレベーターが通過する際にドアを蹴るようになった。昼間は家にAさんひとり。子どもが小さいこともあり、乱暴な対応に軽く恐怖を感じていたという。
これ以上の相手の対応悪化を恐れたAさんは改めて謝罪に行き、具体的な話し合いを重ねた。騒音対策として防音マットをひき、親子でスリッパを使用する、ドアの開け閉めに気を遣うようになり、子どもにもこまめに注意をするようにしたという。結果、その後は苦情が来なくなったという。
●生活音による苦情への謝罪は、子連れがベター
こうしたトラブルに見舞われた場合、早めの段階でどう対応するのが良かったのだろう? 銀座誠和法律事務所の井上雅弘弁護士は、一連の騒音トラブルについてこう指摘する。
「騒音トラブルは、個人によって音の感じ方が違うため、難しい問題です。法廷で争うと結果はどうあれ関係が悪化するため、話し合いで解決を目指すことが多いです。謝罪する際には、お子さんを連れて行ってもいいでしょう。子どもを前にすると文句が言いづらくなり、相手の主張が和らぐことが多いです」
生活音のクレームが来たら、相手がどういった点に不満に感じているのか落ち着いて話し合いを行うこと。双方の認識のズレをすり合わせ、適切な対処をしていけば、関係悪化を防ぐことができそうだ。
(ノオト+石水典子)