●大学生になったら、親の出番はほとんどない
子どもが大学生になったら、親が子を“保護する姿勢“から“見守る姿勢“にシフトチェンジし、子の自立を最終目標に掲げた家庭教育にスイッチを切り替える必要があるという。
「自立には大きく分けて3つあります。まず1つ目は“生活的自立”です。生活的自立とは、自分の身の回りの整理整頓を始め、身だしなみを整えたり、生活リズムを整えることを指します。2つ目は“精神的自立”です。これは自分の人生を、しっかりと自分の足で歩いているかどうかということ。具体的に言えば、自分のことは自分で考えて決定し、行動できる力とも言い換えられるのではないでしょうか。最後に問われるのは“経済的自立”です。これは自分の力で稼いでご飯を食べる力とも言い換えられますが、親に依存することなく自分自身が生きていくために働くことを指します。お子さんが大学に入学したら、親御さんはこの3つの“自立”を支援することを念頭に子育ての最終段階に入りましょう。この時点での過干渉・過保護は禁物。将来的に子どもを苦しめてしまうことになりかねません」(水野氏 以下同)
一般的に言うと、大学生は生活的自立を果たした上で入学し、大学生活の中で精神的自立を果たしながら成人式を迎え、経済的自立に向けての基礎を固めていくことが望まれるが、昨今では、親の過保護や過干渉から、子どもの自立が大きく阻まれているようにも見受けられるという。
「サークルや部活の先輩に親が挨拶をしに行ったり、一人暮らしの子どものマンションに足しげく通って部屋の掃除をしたりご飯を作ったり、子どもの履修登録の内容にまで手出し口出しをするという話をよく耳にしますが、子どもが大学生になったら、親の出番はほとんどないと考えましょう。ここから先は、子どもが悩んだり苦労しながら乗り越えていくなかで成長を果たしていくのが正しいあり方です」
大学生になっても生活的自立が果たされていない若者が多く、大学側も手を焼くケースが見られるとか。
「精神的、生活的自立が年相応に果たされていないがために、誘惑に負け、甘い方へと流されていく大学生も多く存在します。“夢を追う前に最低限やるべきことはやる”という部分を、幼少期から避けて通り抜けてしまうと、人生で最も大切だといわれている“非認知能力(やり抜く力など)”が育たないことが懸念されます。このような”学生の本分を忘れがち”な学生が増えてきた背景には、親の子に対する関わり方の変化が影響を与えているようにも感じられます」
●親は少しずつわが子の手を離す努力を
「結局のところ、生活的自立と精神的自立が大学生なりのレベルで果たされていない背景には、親が子離れできていないことが一因として挙げられる」と語る水野氏。
「可愛かったわが子も、いつかは“3つの自立”を果たして親元を離れて生きていくことになります。寂しいようではありますが、実はそれが子育ての究極目標です。娘さん、息子さんが大学生のうちに、この3つの自立の基礎を育む対応を親ができているかどうか…今一度振り返ってみてはいかがでしょうか」
“3つの自立”を果たすことこそが、親の最終目標。どんなに可愛がって手助けしようとも、やがて親子は分離される時が来る。であれば、親が可愛いわが子の手を、少しずつ離していくことこそが真の愛情なのかもしれない。やがては老い、先立つ親は、いつまでもわが子を守り抜くことはできないのだから…。
(取材・文/吉富慶子)