デジタル安否確認で加入世帯増! 東京日野市・南新井自治会の取り組み


画像説明:南新井自治会の「デジタル安否確認」のLINEメッセージ

東京都主催「町会つながる! デジタルコンテスト」で受賞

デジタルを活用して活性化に取り組む町会・自治会を表彰する東京都のコンテストが初めて行われ、デジタル安否確認訓練を行っている日野市の南新井自治会が受賞しました。他の自治会などにも参考になる取り組み内容を、「防災ニッポン」で紹介します。

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都主催の「町会つながる! デジタルコンテスト」は、デジタルを活用して活性化に取り組む町会・自治会の優秀な取り組みを表彰するもの。今回初めて実施され、最終審査に残った35団体の中から3団体が受賞しました。

LINEで登録会員にメッセージ→安否情報を自動管理

南新井自治会では2021年から、デジタルを活用した安否確認訓練を行っています。自治会本部が、LINEの公式アカウントから、登録している自治会の会員住民あてに確認メッセージを送付します。受け取った人が、webフォームから安否情報を登録すると、本部の管理画面に自動で反映される仕組みです。

対象地域の9割以上が「浸水50㎝以上」

南新井自治会の対象地域は、日野市の東側で、多摩川の支流である浅川に接しており、浅川氾濫時には地域の9割以上が50㎝以上浸水すると見込まれています。また、地域住民が自治会に何を期待しているかについて2020年に意識調査を行ったところ、防災活動への関心が最も高いことがわかりました。

高齢の会員も「LINEは便利」 デジタル活用広がる

南新井自治会では、防災活動でのデジタル活用を進めようと考え、1年交代の役員会とは別に常任の広報委員会を設置。役員のメーリングリストを作り、自治会のホームページも作成しました。

スマホに不慣れな会員も多かったため、まずはスマホに慣れてもらおうとスマホ教室も開催しました。回数を重ね、LINEに登録するだけで、様々な情報を得られることなどを知ってもらったところ、「難しいと思っていたけれど、使ってみると便利」という感想が寄せられるようになったほか、住民同士で、「LINEは便利だよ」「こうやって友だち登録するんだよ」などと教え合うようになり、スマホ利用の輪が広がっていったそうです。


写真説明:南新井自治会では、会員を対象にスマホ教室も実施した

安否確認「白いハンカチ運動」をデジタルでも

南新井自治会ではもともと、リアルの安否確認訓練として、白いタオルやハンカチを玄関先に掲げてもらい、各地域の班長である「組長」が地域を回って確認する「白いハンカチ運動」を年2回実施していました。広報委員会では、「『白いハンカチ運動』を、デジタルでも実施できないだろうか」と考えました。

まずは2021年1月、LINEを使った安否確認を試行。回答を集めて、その結果を役員会に報告し、本格的に実施することについて了解を得ました。次の訓練では結果をグラフ化し、その次はタブレットで集計するなど、徐々に機能を充実させてきました。

現在の「白いハンカチ運動」では、実際にタオルやハンカチが掲げられた件数についても組長がLINEを使って報告し、デジタルの結果と合わせて管理されています。

会員からは、「外出時でも安否を登録できて便利」と評価されているそうです。

取り組みが広く知られ、12世帯が新規加入

自治会の対象地域には800世帯以上あり、学生など一時的な居住者を除いても約400世帯が住んでいます。近年は、高齢などを理由に自治会をやめる世帯が増え、加入世帯は180ほどですが、デジタル活用の取り組みが新聞などで取り上げられたことで広く知られるようになり、新たに12世帯が加入してくれました。

「より実用的な取り組みに」

ただ、広報委員会の伊藤裕造さん(65)は、「災害が起こった時に、デジタル安否確認が十分に機能するかどうかには課題があります」と話します。

災害時の安否確認では、世帯や個人ごとの安否を把握する必要があります。ただ、現在のデジタル安否確認訓練では、個人情報の扱いに懸念があるため、あえて個人情報を含めずに、参加者の所属する「組」の情報だけを登録しています。

自治会では今後、対象地域内の各世帯に固有のQRコードを配布し、個別の番号を割り当てることを検討しています。この取り組みが実現すれば、より実用的なシステムができると期待されています。

伊藤さんは、「今回の受賞はとてもありがたいですが、私たちの活動はまだ途中段階であり、さらに充実させて、賞に見合うものにしていきたい」と話していました。


写真説明:南新井自治会でデジタル活用を進めている伊藤裕造 さん(奥)と、小城三千雄 さん(手前)

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