少年院の子らの共通点「僕の親は絶対にしなかった」我が子を潰す親が“できないこと”とは

少年院の子らの共通点「僕の親は絶対にしなかった」我が子を潰す親が“できないこと”とは

「ゲームは1時間までと約束したのに全然やめない」「約束の時間を過ぎても宿題に取り掛からない」「注意すると反発される」など、子どもが約束を守らないことにイライラしていませんか?
その“約束”は、約束を“押し付けただけ”かも……?

児童精神科医の第一人者である佐々木正美先生は、半世紀以上にわたり、子どもの臨床にたずさわりながら、さまざまな親子に寄り添ってきました。

佐々木先生の著書『【新装版】抱きしめよう、わが子のぜんぶ』(大和出版)では、思春期を迎える前に今から知っておきたい子どもへの接し方について、さまざまな親子のエピソードとともに解説しています。

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今回は「生きる力になる“自尊心”を育む」より、一部抜粋してお届けします。

親の自己保身が子どものプライドを傷つける

「命令」と「約束」はちがうもの

※画像はイメージです

家庭内暴力の青年に苦しんでいるご夫妻が、私のところに相談に来ました。

高校生の息子がパソコンで遊んでばかりいて、学校の勉強が遅れがちになってきた。パソコンを取り上げようとするお父さんと、どうにかしてパソコンを使おうとする息子との格闘の日々が続くなか、お父さんと息子はたいへん険悪な仲になり、今では一触即発の危険な状態にあるということでやって来られたのです。

お父さんは一方的に、「コンピューターは何時間以上しないと約束したのに、あいつは約束を守らない。だからあいつが悪いんだ」と、こうおっしゃるばかりです。

よくよく話をうかがい、私はこんなふうにいいました。

「お父さん、それは約束ではないんじゃありませんか。あなたが押しつけただけ、無理矢理、ウンといわせただけじゃありませんか。強いほうが弱いほうに向かってウンといわせたことを約束といっちゃいけないですね。それは命令しただけです。息子さんが約束を守らなかったというのは、お父さんの一方的ないいぶんですね」

このお父さんは社会的には功成り名遂げた仕事をされている方で、どう収拾していいのかわからないという状態でした。

お母さんは、「もう学校には行かない、将来の希望も夢もなくなった」という息子にただハラハラしているばかりの様子でした。

このままでは何もよくなりません。私は解決策として、もっともよいと思える方法を率直にお話ししました。

「ちゃんと息子さんに謝るのがいいと思います。よく考えたら、私に間違いがあった、行きすぎがあった。約束したなんていったけど、実は命令しただけだった。心から悪かったと思う。謝るよ。こんなふうに、率直に伝えてやり直すのがいちばんではないでしょうか」と。それ以外に、いい方法はないと思えたのです。

※画像はイメージです

よく、みなさん勘ちがいされているのですが、「命令」と「約束」はちがいます。

・命令=一方的に強い者が弱い者に対して力づくでしたがわせること

・約束=お互いに合意のうえ、「こうしよう」というルールを決めること

つい大人は、「親だから」「教師だから」「年上だから」といった理由で、上からものをいうような、強制的なことを子どもに強いてしまいがちです。そして、それを「約束」と勘ちがいしてしまうのです。

大人から強制された偽りの「約束」を、子どもが素直に受け取るわけがありません。むしろ、自立しようとしている思春期の世代は、理不尽なことが大きらいですから、逆に大きく反発することもあるでしょう。

命令では本来人は動きません。相手が納得して受け入れられる条件でなければ、たとえ親の思うとおりになったとしても、子どもの心は不満でいっぱいになるだけです。

ちゃんと子どもと対話をする時間をとってください。意味のある約束、子どものためになる約束だったら、きちんと話せば子どもは必ず理解して、「わかった」とうなずいてくれるはずなのです。

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