体や心の成長に不可欠・周囲とのトラブルが減る「朝ごはんでとりたい栄養素」とは?【小児科医がすすめる朝ごはん】

体や心の成長に不可欠・周囲とのトラブルが減る「朝ごはんでとりたい栄養素」とは?【小児科医がすすめる朝ごはん】

この春から入園や入学で新生活がスタートしたという家庭もあるでしょう。新生活に慣れるまで、とくに朝はあわただしく、子どもの朝ごはんを準備するのが大変なことも。「時間をかけて豪華なメニューを用意する必要はないのですが、朝ごはんで重視してほしい栄養素があります」と話すのは『医師が教える 子どもの食事 50の基本』(ダイヤモンド社)を執筆した小児科医の伊藤明子先生。3~6歳ごろの子どもに食べさせるといい朝ごはんメニューについて、話を聞きました。

朝ごはんを抜くと細胞レベルでエネルギー不足に

――朝ごはんは毎日食べたほうがいいのでしょうか? 3~6歳ごろの子が朝ごはんを抜くのは問題ですか?

伊藤先生(以下敬称略) 朝ごはんは大人も子どもも毎日しっかり食べてほしいと思います。とくに成長期の子どもにとってはとても大切。朝ごはんを抜くと絶食状態が長く続いてしまいます。夕飯が前日の19時だった場合、給食の時間まで17時間くらい何も食べないことになるので、その状態で活動すると、細胞レベルでエネルギーが枯渇してしまいます。

栄養が入らない時間が長いと、体や脳の動きが鈍くなります。保育園・幼稚園や、小学校の活動にも身が入りません。けんたい感も出て、集中力が落ちたりします。脱水や熱中症でぐったりしてしまう子たちの中には朝ごはんを抜いていたりあまり食べていなかったりする子が多くいます。

たとえ給食まで乗りきったとしても、エネルギーが空っぽの状態で食事をすると、血糖値が上がりやすくなっています。そのため、ご飯(白米)からかきこんで食べてしまうと、食後にインスリンが分泌されて急上昇した血糖を下げるので、眠くなったりだるくなったりすることもあります。

朝ごはんでぜひとってほしい、2つの栄養素

――子どもの朝ごはんにはどんなものを食べさせるといいのでしょうか? 

伊藤 私は「タンパク質と食物繊維を意識した朝ごはん」をおすすめしています。

もちろん、ほかにも不足しがちで意識してほしい栄養素はあるのですが、食物繊維は食の欧米化と加工食品が増えたことで、大人も含めてほとんどの日本人がたりていないことから、ぜひ意識してほしいと思います。

食物繊維は、溶けずに腸内を移動する「不溶性食物繊維」と水に溶けて腸内で善玉菌のエサになる「水溶性食物繊維」の2種類があります。不溶性食物繊維はこんにゃく、きな粉、ナッツ類に、水溶性食物繊維は大麦、オートミール、果物、海藻などに多く含まれています。ただ、1つの食材に、不溶性・水溶性どちらかの食物繊維だけが入っているわけではなく、さまざまな割合でいずれも含有していますから、バランスよく複数の食材からとれるといいですね。

――タンパク質はなぜ重要なのでしょうか?

伊藤 タンパク質というと「筋肉や臓器、肌、髪、つめなどがつくられるもとになる栄養素」というイメージを思い浮かべる人が多いと思います。もちろん、そういった意味でも成長期の子どもには重要な栄養素なのですが、タンパク質をとるメリットはそれだけではありません。1995年の論文で、タンパク質をしっかりとると周囲とのトラブルが減ることを示す研究結果が出ているんです(*1)。さらに2017年の研究では「朝にしっかりタンパク質をとった人は、とっていない人よりもよりまわりの人にやさしくできた」という結果が出ました(*2)。

これは、タンパク質を構成するアミノ酸が脳内ホルモン(神経伝達物質)の原材料でもあることから、気分・情緒に影響すると考えられ、現在も研究が進められています。

――朝からタンパク質をとることが大切なんですね。

伊藤 タンパク質は体の中にためておくことができないので、毎食、タンパク質を含む食事を心がけてほしいです。ただ、クリニックの診察室で話を聞くと、給食や夕飯でタンパク質をとっている子どもは多いのですが、朝ごはんでタンパク質をとっている子はとても少ないです。そういった面でも、ぜひ子どもの朝ごはんではタンパク質を意識してほしいと思います。

タンパク質は、卵、魚、肉などの動物性と納豆、豆腐などの植物性があります。それぞれ異なるアミノ酸組成で構成されているので、両方をバランスよくとっていくといいでしょう。動物性と植物性を合わせて、1食あたり「自分の片手の手のひら(指の先まで)にこんもりと1杯分のる量」のタンパク質食材をとることをおすすめします。大人の場合は、目安として重さ100g程度を目安にタンパク質食材をとるのが理想です。

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