意味深…「長く続くといいね」ベテラン社員の言葉
文部科学省が2023年10月に公表した「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」によると、小中高校・特別支援学校における「いじめ」の認知件数は68万1948件。前年度に比べ10.8%増加し、過去最多になりました。
文科省は「いじめ防止対策推進法等に基づき、積極的認知や組織的対応の徹底、いじめ重大事態調査の適切な実施を推進する」としています。
悪口・からかい、仲間外れ・集団無視、持ち物を隠されたり捨てられたり……。こうしたいじめはしかし、大人の人間関係においてもしばしば起こります。とりわけ連日同じ面々が集い顔を合わせる「職場」では、多少とも経験のある会社員は少なくないようです。
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かつて東京都内の小売企業に勤めていた女性A子さん(当時30代前半)は、中途入社したその会社でうまくなじめず、「あれはいじめだったのでは」と今も思い出してはモヤモヤするといいます。
中小規模のオーナー企業。独自の社風やルールを重んじていて、数十年にわたって成長拡大を続けてきたという実績がある半面、それに対する強い自負はどことなく排他的なムードをはらんでもいました。
「入社してから知ったことですが、3年後離職率がかなり高い職場でした。5人入ったら2~3人は3年以内に辞めていたと思います」(A子さん)
新しい社員が入っては去っていくことに慣れているのか、A子さんも入社早々「あなたは長く続けられるといいわね」と、ベテラン女性社員から声を掛けられたことがあったそうです。
職場になじめない感覚は、果たして本人の「気のせい」か?
気のせい? 避けられている感覚が拭えず
A子さんが入社して間もなく開催された、立食式の社員新年会。同じ部署のメンバー数人が談笑しているのを見つけ、A子さんも加わろうと歩み寄っていきました。
その輪の一角、近づくA子さんに対して斜めに背を向けていた若手女性社員がA子さんの気配に気が付きました。「何の話をしているのですか?」と声を掛けようとした瞬間、その女性社員は「ところで見てくださいよ~。最近また太っちゃって、ウエスト部分とかヤバくないですかー?」とおもむろにメンバーの方へ向き直ったのです。
A子さんに完全に背を向ける形になり、彼女よりだいぶ小柄なA子さんは輪に入るきっかけを失ってしまったといいます。
「あれ? 今こちらに一瞬視線を向けていたよね? 私が輪に交ざるのをブロックしたのかな? そんな風に感じてしまいました。その一件だけなら気のせいだったかもしれないんですけど」
それ以降、約1年にわたって「これって『仲間外れ』では?」と思う場面がたびたび起こりました。
休憩時間、作業デスク周辺でおしゃべりしている同僚たちに仕事の段取りを相談しにいったら、その数人が目配せや含み笑いをしてみせた後、事務的な話し方に変わってしまったこと。
「昨日のお店めっちゃ良かったね! お酒の種類も多いし安かったしさー」という同僚たちの会話から、前日、部署メンバーたちが飲み会を開いていたらしいことを知ってしまったこと。
打ち合わせで自分が発言しているときだけは、誰も顔を上げずうなずくなどもせず、ただ配られた資料に目を落とし続けていること。
業務上でも日常でも聞き慣れないワードがしばしば飛び交い楽しそうに笑う同僚たちを見て、まさか自分にだけ知られたくない内容を隠語で話し合っているのではと疑い始めてしまったこと……。
A子さんのメンタルはすり減り、入社から1年後ついに転職を決意しました。
配信: LASISA