液状化が起こる原因とは? 被害事例と対策を紹介

液状化による被害と対策

液状化が発生すると建物や配管の被害、噴水、噴砂(ふんさ:砂と水の混じった状態の泥水が噴き出す現象)、道路の被害などが発生します。

これらを防ぐために、地盤改良を行って液状化層を非液状化層にする工法が効果的であるものの、費用や時間を多く要することになるため、現実的ではないケースも多いです。

そのため、液状化によってどのようなリスクがあるかを調べ、リスクに合った対策をしていくのがポイントになります。

ここでは、液状化による被害と、それぞれの対策を紹介します。

建物の傾き・倒壊

液状化が発生すると建物に被害が出やすく、建物が傾いたり、倒壊したりなどの被害が発生することがあります。

液状化が発生すると、地盤が支持力を失うことで建物が不揃いに沈下を起こす「不同沈下」と呼ばれる現象を引き起こし、建物が傾くように沈下します。傾いた家に住み続けることによる、めまいや吐き気などの健康被害が発生するリスクもあるため注意が必要です。

対策として用いられることが多いのは、建物の基礎下に杭を設置して建物の不同沈下を抑える方法です。


引用:東京都都市整備局「建物の基礎で対応する工法」

配管の被害

液状化が発生すると地中に埋められている上水道や下水道、ガスなどの配管が破損し、ライフラインに影響が出る可能性もあります。配管が破損すると修復に時間がかかるケースも多く、この間は水道やガスが使えず、トイレの使用もできません。

自宅が液状化しないエリアであっても、自宅の配管が液状化するエリアとつながっている場合も被害を受ける可能性があるため注意が必要です。

配管の被害を個人で防ぐことは困難です。地震に備えて飲み水やガスコンロ、簡易トイレなどの備蓄品を備えておきましょう。

地面からの噴水や噴砂の発生

液状化による被害として、地面からの噴水や噴砂が挙げられます。

大規模な液状化が発生して噴水が長時間続くと、住宅の浸水や田畑の冠水につながることもあります。また、噴砂が住宅や道路に蓄積すると交通の妨げになったり、緊急避難に遅れが生じたりする場合もあります。さらに噴砂が乾き、砂ぼこりとなって健康被害をもたらすこともあるため注意が必要です。

自宅における噴水や噴砂へのハード面の対策としては、セメント系固化材と土を混合して固化する柱状改良で連続した壁を作って格子状に囲むことによって、液状化そのものを発生させない地盤補強工法「SHEAD工法」がありますが、費用や時間がかかります。

道路の被害

液状化による被害として、道路の損傷や通行障害なども挙げられます。

道路が被害を受けると緊急避難や救急活動に支障が出たり、通行障害による物流の停止が起こったりなど、避難や生活の面でさまざまな影響が生じます。また、道路の損傷による転倒や事故が発生するなど2次被害が起こる可能性もあります。

地震発生時に少しでも安全に避難するために、ハザードマップを確認し、できるだけ液状化のリスクが少ないルートを選んで避難所に向かうことも大切なポイントです。また、実際に避難所まで歩いてみて、道中に危険なところがないか確認しておきましょう。

まとめ

液状化現象はすぐに人命に影響を及ぼす可能性は低いものの、交通の妨げや避難の遅れ、ライフラインの停止などが発生するリスクがあります。

液状化の対策として地盤改良や建物の基礎工事などが挙げられますが、いずれも費用や時間がかかることから、すぐに実施することが難しい場合もあるでしょう。

液状化が起こりやすい場所はハザードマップで把握できるため、まずは自宅や生活圏にリスクがある場所がないか確認しておきましょう。もし、液状化が起こる可能性がある場所が近隣にあれば、避難の遅れやライフラインの停止を想定し、避難場所までのルートをいくつか確認しておくことや、備蓄品を備えるなど基本的な防災対策を行うことが大切です。

〈執筆者プロフィル〉

田頭 孝志

防災アドバイザー/気象予報士

田頭気象予報士事務所。愛媛の気象予報士・防災士。不動産会社の会員向けの防災記事、釣り雑誌にコラムの連載・特集記事の執筆、BS釣り番組でお天気コーナーを担当したほか、自治体、教育機関、企業向けに講演を多数、防災マニュアルの作成に参画。

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