30代のうちに貯めるべき貯蓄額は「最低1000万円」。その理由とは?

第1回 30代のうちに「1000万円」貯めるには?
家計のやり繰りに追われていると、つい貯蓄のことは後回しにしがち。しかし、子どもの進学やマイホーム、老後の生活費など、長い目で見るといずれ大きなお金が必要になるものです。

「たとえば、老後の生活費は一人当たり最低3000万円が必要です。だからこそ、長期貯蓄は早ければ早いほどいいのです」とアドバイスするのは、節約アドバイザーの丸山晴美さん。その目標に向け、30代のうちに「最低1000万円は貯めておきたいところです」といいます。なぜ1000万円なのか、丸山さんに伺いました。

●1000万円は目標貯蓄額としては最低ライン

大事なのは40代に突入する前にいろいろな選択肢を広げておくこと。そのためには、最低1000万円の貯蓄が必要と丸山さんはいいます。

「1000万円貯まっていれば、たとえば住宅購入にあたり、充分な頭金を用意することができます。通常、住宅の頭金は3割と言われているので、3000万円の物件だと頭金900万円を用意できることになり、残りは2100万円。その後の、ローンの支払いが随分楽になります。ほかにも、お子さんの大学進学のための教育資金や、長期スパンで考えると老後資金にも充てられるでしょう」(丸山さん、以下同)

1000万円というとかなりの大金。それだけあれば家族の人生にさまざまな道が開けます。しかし、人生トータルで考えると、「あぐらをかけるほどの貯蓄ではないです」とのこと。

「もちろん貯蓄は多いに越したことはありません。とはいえ、最初の一歩として1000万円を目指しましょう。現実的な目標として置くには、ちょうどいい額だと思います。お子さんの年齢にもよりますが、30歳からの10年間で年間100万円を貯めるには、単純に月8万3000円強を貯めればいい計算になります。それが難しいなら、毎月5万円で年2回のボーナス時に20万円ずつ、合計40万円貯めると考えるのが一番現実的ではないでしょうか」

30代のうちに貯めるべき貯蓄額は「最低1000万円」。その理由とは?

●収入が足りなくて貯蓄ができない…ならば共働きで補おう

子育て期に差し掛かり、大変な時期かもしれませんが、男女ともに働き盛りな30代、後々の生活と心にゆとりを持つためにも「共働きをしてでも貯蓄に充てるお金を稼ぐ」くらいの意気込みが必要なのかもしれません。

「お金の貯めどきは、3回あると言われています。それは、『独身の時』『夫婦共働きで子どもがいないDINKSの時』『子どもが独立してから老後を迎えるまでの時期』です。この時期にどれだけ貯められたかによって、その後のライフプランに対応しやすくなります。つまり、じつのところ結婚して家庭を持ち、かつ共働きではないとなった場合、“お金の貯め時”に当てはまらないということになってしまいます。たとえば、夫の収入400万円台で、妻は専業主婦で子どもが一人いるとしたら、30代のうちに1000万円を貯めるのは、かなり厳しいと言わざるを得ないでしょう」

そうでなくても、日々の生活に追われるなか、長期的な視野を持って貯蓄するには強い意志が必要です。ただ、今後は将来のリスクを回避するという意識を持って貯蓄をしておくことが、より重要になるといいます。

「これから年金がどんどん目減りするのは明らか。国民年金に加入している人は、もっと頑張らなくてはいけないし、厚生年金も充分な額を受け取れるかといえば分かりません。そして、年を取っていくと、基本的にはどんどん生産性が落ちていきますよね。だから、働ける範囲も狭まるし、所得も下がっていく。そのため、やはり健康で働ける30代のうちにできるだけ貯めておくことが肝になるのではないでしょうか」

1000万円は一朝一夕に貯められる額ではありません。しかし、最も必要な時期に“お金不足”に陥るリスクを減らすべく、まずは貯蓄の意識を持つことから始めてみるといいかもしれません。

(取材・文=末吉陽子/やじろべえ)

お話をお聞きした人

丸山晴美
丸山晴美
節約アドバイザー
ファイナンシャルランナー、消費生活アドバイザーなどの資格を持ち、身の回りの節約術や、ライフプランに添ったお金の管理運用など幅広くアドバイスしている。近著「まるっとわかる!お金の基本」(宝島社)
ファイナンシャルランナー、消費生活アドバイザーなどの資格を持ち、身の回りの節約術や、ライフプランに添ったお金の管理運用など幅広くアドバイスしている。近著「まるっとわかる!お金の基本」(宝島社)