写真:水崎浩志
大分県日田市にある名建築レストラン「すてーき茶寮 和くら」は、35周年を機に、国指定登録有形文化財に指定された土蔵の改装を実施した。材木商だった蔵の歴史を受け継いだバトンは、次世代を見据え、趣はそのままに、機能美を加えた空間に生まれ変わった。
日田にある鉄板焼ステーキレストラン
大分県の北西部の街・日田は、周囲を山に囲まれた盆地で多くの河川が流れ込み水郷を形成し、日田杉と檜が割合を占め森林率が高く、日本の三大林業地として有数の林業地として歴史を刻んできた。
そんな地で、家業のルーツを持つ大正時代の材木商の蔵を改修し、35年前の1989年に豊後牛ステーキを中心とした鉄板焼ステーキレストランとして開業したのが「すてーき茶寮 和くら」だ。
土蔵の持つクラシックな雰囲気にモダンさを加えた空間、時折り鴨や鷺が通る静かな三隈川や、川向こうの亀山(きざん)公園の四季を眼下にする食事体験は唯一無二で、観光客や地元の人々に親しまれてきた。
蔵の良さを生かしながら店全体をアップデート
写真:水崎浩志
今回、次世代へと蔵と蔵が在る地域のポテンシャルをつないでいくために、蔵の良さを生かしながら店全体のアップデートを図った。主に鉄板蔵の改修を行い、佇まいや食のプレゼンテーションはそのままに、カウンター席では目の前を流れる三隈川を“より間近に”、川の四季や環境の清々しさを感じとれる空間にリニューアルした。晴れた日は、差し込む陽の光に川面が輝き、夕方には正面に沈む夕日、夜には月と水面がゆらぐ、ここにしかない食事体験を提供する。
茶寮蔵には、リニューアル後もフィン・ユールやハンス・ウェグナーの名作チェアを配しており、現代の工藝と古い建築が調和した空間で、食後時間を楽しめる。
配信: STRAIGHT PRESS