中学受験、50校の説明会に参加した母が語る「成功体験」――学校選びに失敗しない視点とは?

手作りの資料で娘とコミュニケーション

 学校説明会は講堂や体育館などを会場に、学校側が受験生の保護者に対して「学校を伝える」目的で行なうもの。一般的に、教育方針・指導要領・進学実績・生徒の様子などが説明される。

「私は地方出身者なので、首都圏の私立中学のことは何も知りませんでした。でも、逆に変な先入観がなかったのが良かった気がします。偏差値の上下とか、伝統があるとかないとか関係なく、純粋に娘に合う学校を探そうという思いだけで説明会に行けたからです」

 和歌子さんはそれぞれの学校ごとにチェックリストと質問事項をまとめたノートを作成し、気になる学校には複数回出向いたという。

「公立育ちの私には、私立学校の施設や設備の豪華さにはときめくものがありました。説明会に行けば行くほど、やはり娘にはいろいろな面で充実した学び舎で過ごしてほしいと思いましたね」

 和歌子さんは見学した先の校舎、制服、カフェテリアのメニューなどを得意のイラストで描き、紗良さんの興味を惹くようなオリジナル資料を作ったそうだ。

「それ以外にも、どこに修学旅行に行っているとか、部活は何があるとか、その学校独自の行事だとか、紗良が『これ、楽しそう!』と思うであろうことを中心にイラストの横に文章を添えてノートにまとめました。学校紹介の動画を見せるのがイマドキかもしれませんが、YouTubeは何かと誘惑が多いので(笑)、我が家では寝る前にノートを見ながら母娘で『この学校、校内で猫を飼っていた』とか『ここは制服がイマイチ』『実際に見学に行こうか』なんて話をしていましたね。こんな感じでコミュニケーションすると、同じ目標を持つ戦友みたいになれるのでおすすめです」

 学校説明会では先生や生徒自身が説明するので、実際に進学した場合のイメージもわきやすい。

 「やっぱり生徒さんが学校の主役だと思うので、彼らがどんなふうに過ごしているのか、楽しそうか、明るいか、授業には集中しているか、礼儀正しいかということはチェックポイントの上位に当たります。いろんな学校に行ってみると、本当に雰囲気が全然違うんだなということがわかって、おもしろかったです」と和歌子さん。

 そんな中で、和歌子さんは「ここならば、絶対娘に合う!」という学校に出会ったそうだ。

肌で感じた学校や生徒の「雰囲気の良さ」

「説明会の後、学校見学ツアーが行われる場合があるのですが、T学園は保護者のグループごとに生徒さんがガイドしてくださるんです。もともと、雰囲気が良い学校だなぁと好印象を持っていたんですが、どの回にうかがっても、生徒さんたちが本当に良い子でした。育ちが良いっていうんですかね、どの子も感じがいいんです。学校が一人ひとりを大切にしているということが透けて見えて、ここならば紗良は穏やかに楽しい毎日を送れそうだなって思いました」

 5年生の秋、母娘は満を持して、和歌子さんが推薦する数校の文化祭に出向いたという。

「6年生になると忙しすぎて文化祭にも行けないと聞きましたので、5年生の段階である程度の志望校選定は終えておきたかったんです。思ったとおり、紗良はT学園の大ファンになりまして、そこから真剣に勉強し始めました。やっぱり人間、目標が具体的に絞れたら、それに向かって努力できる生き物なんですね。それで、6年生になる頃にはT学園に届く成績を取ってくるようになったんです」

 それからも、和歌子さんはこの決定に間違いがないかを確認すべく、受験の可能性がある他T学園以外の学校の説明会にも、引き続き参加していたそうだ。

 「これはオマケの話でしかないのですが、あまりに足繁くT学園に通ったものですから、先生方に顔と名前を覚えられてしまって(笑)。合格発表の際には、顔見知りの先生から『本当にお待ちしておりました』とのお言葉までいただき、入学前から親子で感激したほどです」

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