知的障害+自閉スペクトラム症の長女とイヤイヤ期の次女の育児に奮闘しながら、自閉症育児の悲喜こもごもを発信しているにれ(@nire.oekaki)さん。子どもの成長への不安や悩みを赤裸々に描いていて、大きな反響を呼んでいる。
にれさんが新たに描き下ろした漫画とエッセイを加えた電子書籍「今日もまゆみは飛び跳ねる~自閉症のわが子とともに~」が発売された。
ウォーカープラスではこの電子書籍の中から特に印象的な漫画を、にれさんのエッセイと共にご紹介。日々思い悩みながらもなんとか前に進むママと、確かに成長していく娘の姿を描く、共感必至エピソードをお届けします。
■「子どもを愛でる余裕の生まれる環境」に身を置く重要さ
自分だけは絶対にわが子を叩かないと思っていた、なけなしの自信はあえなく崩れ去りました。
まず甘かったのは「まゆみはよく寝る子だし、子どもが2人いても仮眠する時間はあるだろう」という見通しです。自閉スペクトラム症のある子は睡眠障害を併発することがありますが、まゆみにその兆候が現れたのが下の子の夜泣き期と重なってしまったのは誤算でした。
おまけに、当時のまゆみは漫画に描いたこと以外でもいろいろ凄まじく、私は保健師さんに心配されるほどの憔悴ぶりだったようです。なおも間の悪いことに夫が転職して間もない時期でもあり、それまで強力な子育てのパートナーだった夫にも頼り辛い日々が続いていました。そして遂に手が出てしまい……我に返った後、まゆみを抱きしめて3人でわんわん泣きました。想定外の連続は子育ての常といえ、睡眠不足とフラストレーションを積み重ねながら平常心を保つことは不可能と身をもって知りました。
当然、暴力はいけません。自分を正当化する気もありません。ただ、神経発達症(発達障害)の子どもは定型発達の子どもに比べて虐待の発生率が有意に高いことが報告されており、ストレスフルな子育てをしている親の姿が浮き彫りになります。
わが子と意思疎通が困難な中で困り感を減らそうと努力していても、子どもの突飛な行動のために白い目で見られる日常は肩身が狭く、苦しいものです。愛情や精神力だけで乗り越えられず、心が折れてしまう日があっても不思議ではありません。
我ながらファインプレーだったのは、すぐに峰岸先生に連絡したことです。先生も「よく電話してくれた、本当にありがとう」と繰り返していて、この「ありがとう」は手遅れにならない選択をしてくれてありがとう、という意味なのだと理解しました。
ギリギリの精神状態でも「そうだ、相談しよう」と思える信頼関係を築いてくれた峰岸先生には深く感謝しています。先生は最後まで叩いてしまったことを責めず、私の日頃の頑張りを認めてくれました。そして、母子分離の療育につなげてくれたのです。
子どもを持つ前、「私はわが子を叩くような人間ではない」と思っていました。でも今は、子どもに関する痛ましいニュースを聞くにつけ「私も何かの拍子であちら側に転ぶのでは」という恐怖を感じます。きっとそうした親は私だけではないはずです。
峰岸先生の対応から学びましたが、そうした親たちに必要なのは、「子どもを愛でる余裕の生まれる環境」に身を置くことではないでしょうか。具体的には、該当の子どもと離れて過ごす時間をつくることと、親の状況を理解して容認してくれる周囲の人を増やすことです。
育児漫画を描いている身で情けないことに、環境が落ち着いた今でも子どもに怒り過ぎてしまうことがあります。隣近所に鬼ババの館と思われていないか以上に心配なのは、やはり子どものメンタルです。
先日も療育の先生に相談させてもらったのですが、そのときの先生の言葉に救われたので結びに代えてご紹介させていただきます。
「母親だって人間だもの、怒ることがあっていい。特性のある子の叱り方には注意が必要な点もあるけれど、療育と家庭は違うからできなくても当たり前です。怒り過ぎてしまったときは、倍以上の時間をかけて抱きしめ、大好きと伝えてあげてください」
配信: Walkerplus
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