【叶えた格ゲープロの夢】りゅうきち選手が語った“人生を変えた”ターニングポイントは、ウメハラ選手主催の「俺を獲れトーナメント」優勝だった

【叶えた格ゲープロの夢】りゅうきち選手が語った“人生を変えた”ターニングポイントは、ウメハラ選手主催の「俺を獲れトーナメント」優勝だった

年々盛り上がりを続けるeスポーツ界。とりわけ格闘ゲームでは2023年6月2日発売の「ストリートファイター6」(以下、スト6)の大ヒットもあり、幅広い層からトッププロの戦いに注目が集まっている。りゅうきち選手は、そうしたプロ格闘ゲープレイヤーの世界に新たに飛び込んだ新たな選手のひとりだ。

格ゲー界のリビングレジェンド・梅原大吾(ウメハラ)選手が主催したスト6大会「俺を獲れトーナメント」で優勝し脚光を浴びると、2024年2月にJeSU公認プロライセンスを取得し、2024年3月にはeスポーツチームFAV gamingに加入。4月に開催された「EVO Japan」ではスト6部門で4位入賞を果たし、2024年の7月からサウジアラビアで開催される賞金総額90億円(19タイトル)のeスポーツ大会「Esports World Cup」の出場が決定した。

今回、「ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2024」の出場選手にエントリーされたばかりのりゅうきち選手に、専業プロに至るまでの経緯や、これからの展望について聞いた。

■格ゲーにのめり込んだきっかけは「闘劇」でのコンボミス

――今年プロデビューされたりゅうきちさんですが、そこまでの経緯を振り返ってください。

【りゅうきち】格闘ゲームをはじめたのは中学1年生に上がる頃で、そのときはストリートファイター4をやっていました。スタンダードなキャラで格闘ゲームを学べるというのと、自分の名前が「“りゅう”きち」ということもあって、当時はリュウでプレーしていました。

――格闘ゲームのプロを目指そうと思ったきっかけは?

【りゅうきち】僕が子どもの頃はまだプロゲーマーという職業が確立はしていませんでした。本気でプロを目指すと心に決めたのは最近で、スト6が発売(2023年6月)する頃でした。もともと22歳頃まで広島に住んでいて、社会人として合間にゲームを遊びでやる感じでしたが、上京して大会に出やすくなったり、ゲームをする環境も整ったりして。「いつかは本気でゲームをやってみたい」と思っていたので、スト6が発売するタイミングで「プロを目指そう」と決めました。

――“格ゲー歴”の中でのターニングポイントはどこでしたか?

【りゅうきち】1つ目のターニングポイントは、中学生の頃の「闘劇」予選です。その頃は格ゲーの実力もちょっとついて、近場の大会があったら出ようかくらいのスタンスでしたが、地元で開催された予選会で全国大会出場を目前にコンボミスで負けちゃって…。ミスさえなければ勝っていた試合に負けて、すごく泣きました。純粋に「強くなりたい」と格ゲーにのめり込んでいったきっかけがその経験になります。そこからは、友達と遊んだり部活をしたりはせずに格ゲーに向き合っていました。

■「俺を獲れ」の準決勝は“寿命が10年縮んでも勝つ”つもりで挑んだ

――ウメハラさん主催の「俺を獲れトーナメント」では優勝しました。

【りゅうきち】スト6には「プロゲーマーになる」と決心を決めて取り組んでいました。ただ、僕はまだ実績も何もなかったので、大会で結果を残さないとアピールもできないし、難しいとは思っていました。そんなときに「俺を獲れ」が発表されたんです。

ウメハラさんの企画なのでやっぱり影響力がありますし、ここで勝てば絶対に“人生が変わる”と思っていたので、仕事をしながらも「俺を獲れ」を勝つことを生活の最優先に据えました。今こうしてここにいるのも、サウジの大会に出られるのも「俺を獲れ」の優勝があってのことなので、まさに“格ゲー人生で最大のターニングポイント”でした。

――「俺を獲れ」は大きなプレッシャーがあったと思いますが、当時はどんな心境でしたか?

【りゅうきち】準決勝戦でNoble選手と対戦をして、その試合は何が何でも負けられない「寿命が10年縮んでもここは勝つぞ」という気持ちで取り組んでいました。

僕とNoble選手の関係は“不仲”で通っています(笑)。なので、対戦前やVTRの収録でも自分を鼓舞するというか、エンタメの部分でも盛り上げられるようにバチバチに「俺が勝つのが当たり前だ」くらいの強気な発言をしていましたが、やっぱり緊張はしました。あとは準備したことをやれば勝てると思っていたので、それを実直にやった感じです。

――「準備したことをやれば勝てる」というのは、「闘劇」でのコンボミスの体験が今に繋がっているのでしょうか。

【りゅうきち】練習でできないことは本番でもできないので、まずは練習でコンボをミスらないようにする。本番は緊張や体調、環境も全然違うので、普段の練習でミスらない練度だったら、実戦でミスるのはしょうがない、それでOKと割り切っています。

■プロは「ツキのあるときに勝ちきる力」が大事

――プロのキャリアは始まったばかりですが、プロになった際の心境は?

【りゅうきち】「やっとここまで来たか」という思いと、スト6が発売されて丸1年経たないなかでプロになったので「早かったな」という思いがあります。「俺を獲れ」をはじめ複数の大会で結果も残せて、FAV gamingに加入して、この数カ月は本当にあっという間でした。

――「俺を獲れ」以降の活躍は目覚ましいものがあります。何が結果に結びついたと分析されていますか?

【りゅうきち】ここまでトントン拍子に結果が出るとは思っていなくて、これは“実力以上”の上ブレだとも思っています。とはいえ、“運がいいときに勝ち切る力”があるかないかで、プロのなかでも差はあると思っていて。トーナメントの運がいいとか、そのときの読み合いが噛み合うとか、負け試合のはずなのに不思議と勝っちゃうとか、そういう運がいいときでも、実力の平均点が高くないと優勝まで行くのはすごく難しいと思います。最近の結果を見ても、平均点が高いからこそ“ツイてるとき”に勝てているのかなと感じます。

――実力の平均点が高いのは大前提として、冷静に勝ち切れるところが大きいと。

【りゅうきち】それで言うと、2024年の2月に名古屋OJA BODY STAR SFL 2024 トライアウト大会が3回あって、僕は3回目の大会で優勝しましたが、1回目と2回目の大会ではいいところなく終わっていました。この大会は「JeSU公認プロライセンス」発行の推薦がかかっていて、考え方が「プロライセンスを取りたいから負けられない」と受け身になっていました。「投げたいけどシミーされたら怖い」「無敵技を打つのも怖い」って余計なことばかり考えていました。

今は「無敵技をガードされて負けるのもしょうがない」「この状況でこの技を出したら結果的にプラスだよね」と状況をちゃんと把握して、冷静に考えられるようになりました。それが現在の好調の要因だと思っています。

■プロ1年目、目標は「日本開催の世界大会」

――お話しを聞いて、プロゲーマーの世界でも“メンタルコントロール”の重要性を感じました。日々の練習でメンタル管理を意識することはありますか?

【りゅうきち】普段の練習はキャラクターの攻略ですが、大会の際は直前に対戦相手がわかるので、相手のプレーを遡ってみて、「この人はこうしてくるだろう」と試合をイメージして実戦に臨むというのはよくやっています。

情報が少ないプレイヤーと当たることもありますが、その場合はリプレイを見て、予習して、自分だったらこう動くかなとシミュレーションをします。「EVO Japan2024」でもそういう相手とぶつかって実際負けそうになった場面はありましたが、それでも動じることなく、「普段の立ち合いでは勝っているから」「いつも通りやるのが一番勝率が高い」といった点を意識してプレイしました。

――トレーニングで特別な準備や習慣などはありますか?

【りゅうきち】周りのプロゲーマーと一緒に攻略して、それを自分のスタイルに落とし込めるように練習するという形で、特別なことはやっていないと思います。ただ、専業になってからはときどさんを見習って、トレーニングジムに通って身体を鍛え始めました。先日の「EVO Japan」も、三日間を通して常に冷静でいられたのは、もしかしたらジム効果が出ているかもしれないです。

――オフラインの大会は会場にいるだけでも消耗すると思いますし、ストリートファイターは海外大会に参加することが多いのでスタミナは重要ですね。

【りゅうきち】コロナ禍前は、FAV gamingのチームメイトであるsako選手やりゅうせい選手は年間20回ぐらい海外遠征をしていたそうです。そうすると自律神経がおかしくなり、遠征中だけじゃなく日本にいても寝られなくなったり、身体の不調はメンタルの不調にも繋がると聞きました。今後、そうした点を考慮したトレーニングもやっていきたいです。

――歩み始めたばかりのプロゲーマー人生ですが、目標を教えてください。

【りゅうきち】短期で言うと、SFLを優勝してワールドチャンピオンシップに出て両国国技館(※ストリートファイターリーグ: ワールドチャンピオンシップ 2024の会場)で試合をしたいです。スト6の世界最強チームを決める大会が日本で開催されるというのは、国内でも大きなニュースにもなると思います。プロとして多くの人に注目される大会で活躍するのが目標です。

――では長期スパンの展望は?

【りゅうきち】格ゲー界のレジェンドたちと肩を並べられるようになりたいです。ウメハラさん、sakoさん、ときどさん、ボンちゃんさん、ふ~どさん……、そういう方たちはやっぱりパワーを持っているし、プロゲーマーとして確固たる地位を確立しています。僕はまだプロになって間もない新人ですが、実績を重ね続けて、僕自身も面白くなって、個性を出していきたいと思います。

――Fandomplusは「推し活を応援するトレンドメディア」です。最後に、りゅうきち選手の「推し」を教えてください。

【りゅうきち】僕の推しはVTuberの天宿なげきちゃんです。格ゲーVTuberグループ・りーさるぷらんに所属していて、スト6を教えたり他のゲームも一緒に遊んだりしています。ゲームに対してすごく真面目で、スト6もめちゃくちゃ上手くて、マスターリーグではレジェンドにタッチできるくらいの実力を持っています。でも他のゲームだとちょっと抜けているところもあって、そのギャップもかわいくて。ビジュアルも声もいいので、よければ皆さんにも推してほしいです。

取材協力:FAV gaming

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