4月から放送スタートした、NHK連続テレビ小説『虎に翼』。男尊女卑の価値観が色濃い昭和の時代、当時の女性は婚姻によって「無能力者」とされたり、裁判官になれなかったり、現在から見ればさまざまな不条理の中で生きていた。しかし、『虎に翼』の時代から100年余り経つ令和の今にも、旧時代的な価値観が残っていると感じることがある。新しい嫁姑関係を描いたコミック、かときちどんぐりちゃん(@katokich)さんの『推し嫁ルンバ 嫁ぎ先のお姑さんがいつも私に冷たいと思っていたら、実は推しとして見られていた話』にも、古い価値観の残り香と、それに辟易する人たちの姿が描かれる。
本作の主人公・佐藤朋美は、出版社で編集長をしている。30代の終わりに雑貨屋店主・光林寺ひろしと出会い、結婚することになった。朋美の父に言わせると、朋美は「行き遅れの年増」であり、「女らしいところもなく仕事にばかり打ち込んで」いる娘らしい。また、朋美がウエディングドレスを試着した際は、その姿を見るや否や開口一番「とうに三十路過ぎた女がみっともない」と一蹴するのだった。
こうした父親のもとで育った朋美の性格には、自信が持てない、女性らしく振る舞うことへの違和感がある…といった影響が及んでいるようだ。作者のかときちどんぐりちゃんさんに、本作を制作する中でどのようにキャラクターや関係性を構想されたか、また、古い価値観についてご自身がどのように考えられているかお話を伺った。なお、かときちどんぐりちゃんさんは『虎に翼』の視聴者であり、関連するイラストをSNSに投稿されている。
■古い価値観に基づいてあーだのこーだの言ってくる人は責任を取ってくれない。目の前の選択肢から幸せを選び取って!
――明るい世界観の本作ですが、朋美の父親が登場するシーンには不穏な空気が漂っていました。父親のキャラクターは、どのように考えられましたか?
フランク・キャプラ監督の映画が大好きなので、楽観的で明るい漫画が描きたい!と思っていたのですが、話を進めていくうちに奥行きが足りないように思い、少し不穏な存在を登場させることにしました。また、朋美を描いていて、彼女のキャラクターにはちょっと影があるな…と感じていたので、旧時代的な雰囲気を持つ父親にしてみました。
――父親のもとで育った朋美には、どのような影響が及んでいるでしょうか?
自信満々で、家父長制の意識が強い父親による独善的なしつけの影響があるのではないか?と思っています。尺が足りず、深堀りできなかったことが悔やまれますが、作品の終盤、披露宴でひとりの成熟した大人、社会人として、我が娘に向き合うことができてよかったですね、お父さん。
――朋美と父親の関係性について、参考にされたエピソードがあればお聞かせください。
長く父親の庇護下にあり、その価値観の影響を強く受けて育った女性を「父親の娘」という概念で説明している書籍を読みましたが、そのような呪縛から解き放たれるにはどうすればいいのか?と深く考えさせられました。朋美が男装の麗人として社会に存在しつつ、愛する人と人生を共に歩もうとしている姿から、自分なりの答えを見出せたらな…と、執筆中はずっと悩んでいました。これからも抱えていきたいテーマです。
――令和の現在、家父長制の名残りを感じることはありますか?
東日本大震災の被災地で、長年ボランティアとしてサロン活動の運営をしていますが、コミュニティ形成の過程で中心となっているのは女性ばかりです。「なぜ男性たちは顔を出さないのか?」と尋ねると、「女の仕事だから」という答えが返ってきます。珍しく男性が来ると、ふんぞり返って威張っています。町内会にしても、役がついている状態でなければ動こうとしません。常に上に立ちたいのだな、令和なのにな…と不思議に思っています。
――古い価値観に苦しむ人に声をかけるとしたら、どんなメッセージを送りますか?
古い価値観に基づいてあーだのこーだの言ってくる人は、あなたの人生について、全然責任を取ってくれません。目の前の選択肢から、誇りと自信を持って幸せを選び取ってください。
配信: Walkerplus
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