下腹部に違和感を感じること、女性なら誰しも経験があると思います。
月経に関することだったり、子宮に関することだったりしますが、実は卵巣が原因のことも。
子宮と並び、女性にしかない臓器である卵巣。
普段意識することは無いかもしれませんが、ちょっと意識を向けてみませんか?
今回は、卵巣のう腫の種類について、森女性クリニックの森久仁子先生にお話を伺いました。
どの位置にあるか知ってる?卵巣とその働き
卵巣は子宮の左右に1個ずつある2~3cmの臓器です。
子宮を逆三角形のようにイメージすると、その上部の角から卵管につながり、卵管の先に卵巣があり、子宮同様骨盤の中にあります。
卵巣は卵子を含む卵胞(卵子に栄養を供給する液体が入った袋のこと)の貯蔵と成熟の促進、排卵を司っています。
卵巣は上皮に被われていて、上皮直下には多数の卵胞が存在します。
成熟した卵胞から卵子が排出される現象を排卵といい、閉経までの間、約4週間に1回のサイクルで生じます。
卵巣に起こるトラブル、のう腫とは?
卵巣に液体が入った袋状のしこりを卵巣のう腫といいます。
液体の種類により漿液性のう腫、粘液性のう腫、皮様のう腫、卵巣チョコレートのう腫などがあります。
卵巣のう腫の症状はお腹が張る感じや、下腹部痛などですが、漿液性のう腫・粘液性のう腫・皮様のう腫は小さいうちは無症状で経過することが多く、かなり大きくなってから症状が出現します。
大きくなる途中でお腹の中でのう腫がねじれてしまうことを茎捻転といい、突然強い痛みがおきます。
また、卵巣のう腫が破裂することもあり、茎捻転と同様に突然強い痛みがおきます。
卵巣チョコレートのう腫では、大きさにかかわらず子宮内膜症の症状である月経痛、性交時痛、排便痛などがみられます。
漿液性のう腫(しょうえきせいのうしゅ)
好発年齢は40~60歳代で、卵巣に透明の液体がたまって生じます。
粘液性のう腫(ねんえきせいのうしゅ )
幅広い年齢層に認められ、漿液性のう腫に比べて大きいことが多いです。
ゼラチン状の粘液がたまって生じます。
皮様のう腫(ひようのうしゅ)
20~30歳代では最も多い卵巣のう腫で、歯や毛髪や脂肪などが含まれたドロドロした物質がたまって生じます。
卵巣チョコレートのう腫
月経毎に出血した血液がたまって生じます。
のう腫の内容物は徐々にたまった古い血であり、チョコレート様の液体なので、卵巣チョコレートのう腫といいます。
漿液性のう腫、粘液性のう腫、皮様のう腫の原因ははっきりしていませんが、皮様のう腫は卵子が未受精の段階で、体を作るための分裂を始めてしまうためにおこるのではないかと考えられています。
卵巣チョコレートのう腫は子宮内膜症が原因で発生します。
子宮内膜症とは、子宮内膜の組織が子宮外に発生し増殖する病気です。
子宮以外の場所で月経毎に出血がおき、炎症や癒着をおこすことで、月経痛などの痛みがおきます。
また増殖を繰り返すため、腹膜や臓器の表面に血が入った袋状の腫れができます。
それが卵巣に発生すると、卵巣表面で月経毎に出血がたまり、卵巣チョコレートのう腫となります。
子宮内膜症は女性ホルモンに依存する疾患であることはわかっていますが、子宮内膜症の原因は諸説あり、まだ解明されていません。
女性に多い、下腹部に関するトラブル。
月経痛やPMSなどと思ってしまいがちですが、卵巣にトラブルが起こっている可能性もあるのですね。
次回は、卵巣のう腫の治療についてお話しいただきたいと思います。
[執筆者]
森久仁子先生
産婦人科専門医、医学博士
大阪医科大学を卒業後、同大学産婦人科学講座に入局。
同大学産婦人科学講座助教、和歌山労災病院をへて、平成25年和歌山市に森女性クリニックを開院。
プライバシーに配慮したクリニックで、産婦人科としての枠組みだけではなく、女性医療の充実を目指すべく診療を行っている。
森女性クリニック
配信: キレイ研究室
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