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気象庁が発表する情報は数多くあり、防災力を高めるためには1つ1つの情報を正しく理解して活用することが大切です。
「記録的短時間大雨情報」は気象庁が発表する情報の1つで、大雨による災害リスクが高まったときに発表されます。中には、「記録的短時間大雨情報を初めて知った」「どんなときに発表される情報?」など疑問に感じる方もいるかもしれません。
この記事では、記録的短時間大雨情報の概要や基準、避難時の注意点を紹介します。
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記録的短時間大雨情報とは?
「記録的短時間大雨情報」とは、数年に1度程度しか発生しないような短時間の大雨を観測したり、解析したりしたときに気象庁が発表する情報です。
その地域にとって、土砂災害や浸水害、洪水発生につながるような、まれにしか発生しない雨量であることを知らせるために発表します。
記録的短時間大雨情報は最近できた情報ではなく、1982年の長崎豪雨をきっかけに、1983年10月1日から運用されています。
記録的短時間大雨情報は以下の条件を満たすと発表されます。
・雨量基準を満たす
・大雨警報発表中
・キキクルで紫(危険)が出現している
雨量基準は1時間雨量歴代1位や2位の記録を参考に、府県予報区ごとに定められています。府県予報区は、各都府県ごと(北海道や沖縄は分割)に設定された予報区のことです。
気象庁が公開している記録的短時間大雨情報の発表基準では、地域によって幅はありますが、1時間雨量80mm~120mmが発表基準となっています。
そのため、「1時間に○○mm以上降ると記録的短時間大雨情報が発表」と決まっているのではなく、同じ雨量でも発表される地域もあれば、発表されない地域もあります。
記録的短時間大雨情報が発表されたときには、住んでいる地域で土砂災害や浸水害、洪水災害の発生につながるような猛烈な雨が降っている状態です。注意報や警報のように危険が高まる前に発表されるものではなく、すでに危険な状態になっているときに発表されます。
記録的短時間大雨情報の発表方法
記録的短時間大雨情報は気象庁が発表し、ニュース速報やJアラート、自治体が使用する各種ツール、防災アプリなどを通して住民に配信されます。
記録的短時間大雨情報が発表される際、「○○時△△分□□県で記録的短時間大雨」が決まり文句となっています。そのあとに、記録的な大雨を1時間に観測した地点と雨量を、もしくは解析した市町村と雨量を記述します。
(例)
・〇〇時○○県で記録的短時間大雨
〇〇市付近で約100mm
大雨特別警報との違い
「大雨特別警報」は警報の発表基準をはるかに超える大雨が予想され、重大な災害の起こるおそれが著しく高まっているときに発表される警報です。
記録的短時間大雨情報は、大雨警報発表中に実際に観測された雨量に基づき災害の危険性が高まっているときに発表されるのに対し、大雨特別警報は避難指示に相当する気象状況の次元をはるかに超えるような現象をターゲットにしているという違いがあります。
なお、大雨警報は警戒レベル3相当(高齢者等避難)に該当します。
記録的短時間大雨情報はキキクルで警戒レベル4相当以上(避難指示の目安)が出現されると発表される可能性がありますが、大雨特別警報は警戒レベル5相当(命を守るための最善の行動をとる)に達すると発表される情報です。
そのため、記録的短時間大雨情報が発表されて大雨が降り続くと、大雨特別警報が発表される可能性もあります。
このように、大雨による災害の危険度は大雨警報→記録的短時間大雨情報→大雨特別警報の順に高くなります。
過去の記録的短時間大雨情報の事例
記録的短時間大雨情報の発表回数は年によって異なるものの、1年あたり100回前後発表されています。
最近の発表事例として以下を紹介します。
記録的短時間大雨情報はどこに住んでいても発表される可能性がある情報です。発表されたときには正しい行動が取れるように備えておく必要があります。
記録的短時間大雨情報が発表された際の避難行動
記録的短時間大雨情報が発表されるということは、すでに土砂災害や浸水害、洪水などの災害が発生するような雨量が観測されている状況です。
また、記録的短時間大雨情報は市町村単位で発表されるため、自宅や現在いる場所が対象地域となっている場合は、状況に応じて避難しましょう。
適切な避難をするためには、ハザードマップで災害リスクの有無を確認しておく必要があります。
例えば、洪水・内水のハザードマップで浸水想定区域に入っている場所は、記録的短時間大雨情報が発表された場合に浸水や洪水などのリスクが高まります。一方、浸水想定区域に入っていない場所であれば、これらの災害に巻き込まれる可能性は低いため、屋外に避難する方がリスクは高くなります。
土砂災害ハザードマップにおいても同様で土砂災害警戒区域に入っている場所は、土砂災害に巻き込まれるリスクは高くなります。
上記を踏まえて、記録的短時間大雨情報が発表されたときの避難行動について、屋内・屋外・乗り物に乗っている場合を想定してそれぞれ紹介します。
屋内にいる場合
記録的短時間大雨情報が発表された場合、浸水想定区域と浸水土砂災害警戒区域に入っていなければ在宅避難で問題ありません。一方、いずれかのリスクがある場合は屋外の状況を見ながら、避難所に早めに避難しましょう。
ただし、記録的短時間大雨情報が発表された時点ですでに大雨が発生しているため、少しでも避難に身の危険を感じる場合は自宅の高い所(2F以上など)に移動し、土砂崩れのリスクがある場合は山や崖から一番遠い場所で在宅避難するのが望ましいです。
屋外にいる場合
記録的短時間大雨情報が発表されたタイミングで屋外にいる場合は、山や崖、川から離れて避難所やショッピングセンターなど安全な場所に避難しましょう。また、水路や排水溝なども水量が増えて危険になるため近づかないようにしてください。
道路が浸水している場合はマンホールのふたが外れることもあるため、足元に注意しましょう。いつも通っている道でも大雨が降っていると路面状況が変わる可能性があるため、油断せず慎重に避難することが大切です。
車・バイクに乗っている場合
記録的短時間大雨情報が発表されているときに車やバイクの運転をしている場合は、川や山、崖から直ちに離れて安全な場所に避難しましょう。
なお、車に乗っている場合は、周囲の安全が確認できたら車に乗ったまま雨が小降りになるのを待ちましょう。大雨が降っている最中に車から降りて徒歩で移動すると、側溝に落ちたり、流されたりする可能性もあるため危険です。
やむを得えない事情で運転が必要な場合、高架下のアンダーパスやすり鉢状(くぼんだ状態)の道路は冠水する可能性があるため避けてください。前方に冠水している場所がある場合は無理をせず引き返します。
また、電車やバスなどの公共交通機関を利用しているときに記録的短時間大雨情報が発表された場合は、係員の指示に従ってください。
配信: 防災ニッポン