高級レストランではなく庶民的な焼き鳥屋で、指輪ではなく全財産の通帳を手に、男は決死の覚悟で叫んだ!「俺と結婚してください」と。顔面蒼白、鬼気迫るそのプロポーズはみごと成功!最愛の人からとびきりかわいい笑顔と「イエス」の返事をもらうことができた…のだが、それから時は過ぎ12年後、男は結婚できていなかった。
それでも、あの日最愛の人へ差し出した通帳に、圭祐は毎月欠かさずお金を振り込み続けていた。そんな彼の前に、「お父さん」と呼ぶ子どもが現れた。12年の歳月を経て、最愛の人が遺したのは、自分の子どもと“臓器”だった!!圭祐と息子の航士は、最愛の人・千津子の臓器を訪ねる旅に出る――。
衝撃的な展開から始まるこの漫画を描いたのは、漫画家の高村秀路(@takamurahideji)さん。「月例マグコミマンガ大賞」(マッグガーデン)に出した作品が受賞したことを機に、Web漫画サイト「MAGCOMI」にて本作「うらうらひかる 津々に満つ」の連載をスタート。約1年間に渡って連載を続け、単行本を発行。2024年2月には最終巻となる第2巻も発売された。高村秀路さんに本作について、詳しく話を聞いてみた。
――本作「うらうらひかる 津々に満つ」は重たいテーマを扱った作品ですね。力を入れて描いた箇所や、著者ならではの苦労した点を教えてください。
1年間くらいと決まってはいたものの、初めての連載で右も左もわからず、何かにこだわったりする余裕はありませんでした。センシティブなテーマなので、事実と異なることだけは描かないように資料をたくさん読みました。3話くらいから徐々に慣れてきたんですが、5話を描いているとき、急に「キャラの顔が…全員変だ!」という気がしてきました。口の位置が下すぎる気がして、「ちょっと口の位置を上げる→それに合わせて鼻の位置も上げる→目の位置も上げる→あ~これは最初と同じ顔ですね」みたいな不毛な作業を延々と繰り返していました。5話はそういうわけで本当に作画に時間がかかりました。
――5話で急に…ですか?そんなに気になるほど変だったのでしょうか…?
いえ、今見るとそんなに変じゃないんですが…。たまにそういう、変に見える時期が来るんですよね。あれってなんなんでしょうか…。アナログ作業からデジタル作業に移るときも、自分の意思でこれをよしとしたとは思えない絵があったりします。本当に変なのか、変に見えるだけなのか…?わからないのも困ります。
――永遠に考えちゃいそうですね。完全にループに陥っちゃってますね(苦笑)。
はい。でも、あとから見返して「あ、これは本当に変でしたね」ということもあります。
――本作は最終巻である2巻が2024年2月に発売されました。2巻の見どころについて教えてください。
この作品は、トーン(スクリーントーン)を貼る作業を友人がたくさん引き受けてくれて、2巻の最後のほうの陰は、その友人がほとんど作業してくれました。千津子が生まれたての航士を抱いているシーンがあるのですが、「ここ、尊いって感じで」とだけお願いしたら、本当にすごく尊い感じにしてくれました。ぜひみなさんにも見てほしいです。
――わぁ、そのシーンをとても見たくなりました!そういう制作時の裏話を聞くと、作品を読むときの楽しみが増す気がします。
あと、もうひとつ。私のお気に入りは圭祐が先輩と対峙しているシーンなのですが、「ここ『死んでくれ』って言ってるから『死んでくれ』って言ってるっぽい陰つけて」とお願いしたら本当にそういう陰にしてくれました。このシーンの、倒れているテーブルの足を見ていただきたいです。右側の上の足です。友人はここの光を抜いてくれています。私だったら絶対にここの光は抜けません。ここに「『死んでくれ』って言ってる感」が凝縮されています。すごいです。
――陰や光で「『死んでくれ』って言ってる感」を出すお友達って、すごいですね。
本当にすごいです!助けてくれる友人がいる人生にしてもらってありがたいです。
――最後に、今後の新作のご予定について教えてください。
今、いろいろと頑張っているところです。どこかで見かけたら読んでいただけるとうれしいです。
最愛の人の面影を求めて、彼女が遺した子どもとともに臓器を訪ねて回ることにした主人公。この旅の終着点には何があるのか?どんな真実が待っているのか…?感動と衝撃の話題作をぜひご覧あれ!
取材協力:高村秀路(@takamurahideji)/マッグガーデン
配信: Walkerplus
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