【マンガで学ぶ相続手続き】遺言書がない場合は相続人で話し合おう!遺産分割協議や戸籍の附票について相続の専門家が詳しく解説

【マンガで学ぶ相続手続き】遺言書がない場合は相続人で話し合おう!遺産分割協議や戸籍の附票について相続の専門家が詳しく解説

こんにちは。G1行政書士法人 代表の嶋田裕志です。相続・遺言専門の行政書士として10年以上、年間1000件を超えるご相談にお応えし、行政書士の範囲だけでなく、相続税や不動産など相続に関する幅広い知識をもって各専門家とともに相続手続きを代行しています。

突然ですが、皆さんは、身内の方を亡くされた経験はありますか?

亡くなった人が近しい関係であればあるほど、皆さんは「当事者」として死亡後の手続きに関わることになります。具体的には、その亡くなった瞬間から、通夜、葬儀、役所での手続きなど、とにかく時間に追われながらたくさんの手続きをしなければなりません。

悲しくて、寂しくて、つらくて、耐えがたい状況であっても、手続きは待ってくれません。特に死亡後すぐの手続きには期限があるものも多く、慣れない手続きで心身共に疲れてしまい、体調を崩してしまうという方もたくさんおられます。

ここでは、いざ皆さんが「当事者」になったときに困らず相続手続きができるよう、詳しく解説いたします。

今回は、遺言書がない(もしくは無効だった)場合に必要になる遺産分割協議と、相続人の連絡先がわからない際に役立つ「戸籍の附票」についてお話しします。

みなさん、年間にどれぐらいの人が亡くなり、そのうちの何件が「遺言書があったケース」だと思いますか?

厚労省、公証人連合会、司法統計などによると、年間の死亡者数が約150万人に対して、公正証書遺言の作成件数は約11万件、自筆証書遺言の検認件数は約2万件というデータがあります(※公正証書遺言は作成件数なので、実際にそれを使って手続きをした件数ではありません)。

この数字からわかることは、圧倒的に「遺言書がない相続」がまだまだ多いということです。

相続手続きにおいて遺言書がない場合は、相続人”全員”で遺産分割協議をして手続きを進めることになります。

遺産分割協議とは、相続人全員で「誰が、どの財産を、どれだけもらうのか」について話し合うことですが、そのためには当然、誰が相続人なのかを特定し、その人に連絡を取る必要があります。しかし、電話番号がわからない、住所もわからない、もしかすると亡くなっているかも…という相続人がいることも考えられます。

そういった少し特殊な状況での手続きの進め方も含め、ここでは遺産分割協議と相続手続きの進め方についてお伝えします。

■遺言書がない、もしくは無効だった場合は遺産分割協議が必要
先にお伝えしたように、遺産分割協議とは、相続人全員で、亡くなった人の遺産をどのように分けるかを協議すること、いわゆる「話し合い」です。

そもそも、遺言書がないケースはもちろんですが、自筆の遺言書があったが無効だったというケースは決して珍しくありません。その場合は相続人全員で遺産分割協議をして手続きを進めることになります。

また、有効な遺言書があった場合でも、その遺言書に記載のない財産があれば、それについては遺産分割協議が必要という点には注意が必要です。

話し合いの結果、誰が何を相続するかが決まれば、それを書面にまとめておきましょう。この書面を「遺産分割協議書」と言い、全員がその内容に合意している証明として、署名して実印を押すのが一般的です。

口頭での合意でも無効ではありませんが、遺産分割協議書の提出が求められる相続手続きもあります。書面にまとめることは忘れないようにしましょう。

■遺産分割協議書を作成する
冒頭でもお伝えしましたが、遺言書を使っての相続手続きはまだまだ少なく、遺産分割協議をして手続きを進めることがほとんどです。

この場合は、相続人全員で協力して手続きを進めることになります。

相続人全員で行うことは、
・相続財産の分け方について合意すること
・その合意を証明するために、遺産分割協議書や各手続き先の所定の書類に、署名・捺印をすること
です。

必ずしも全員が顔を合わせ、一緒に銀行や法務局へ行く必要はなく、実際に手続き書類一式を窓口に持参するのは、代表者1人で問題ありません。

遺産分割協議書は相続人全員の合意の証明ではありますが、手続き先によっては別途、所定の書類上で証明しなければいけない場合があります。

たとえば、
・銀行→各銀行所定の相続届
・証券会社→各証券会社所定の移管依頼書
などです。遺産分割協議書を作成したあとも、引き続き協力しなければならないことがあるかもしれないことは覚えておきましょう。

また、合意を証明する書類だけでは、その書類に署名捺印した人が「本当に相続人なのか」「これで相続人全員なのか」を知ることができません。

そのため、
・亡くなった人の出生から死亡までの一連の戸籍
・相続人の現在戸籍
も手続きの際は一緒に提出することになります。

これらの戸籍によって各手続き先は相続人が何人かを把握し、署名捺印した書類に全員分がそろっているかどうかを照らし合わせて確認します。

■連絡先のわからない相続人がいる場合の手続き
戸籍等によって相続人全員が明らかになったとき、同じ「相続人」という立場であったとしても、連絡先を知らないということも十分にあり得ます。

たとえば、
・亡くなった人の前妻(夫)との間に生まれた子ども
・縁遠いおじさんやおばさん、またその子ども(いとこ)
などであれば、そういう人がいるということ自体は認識があったとしても、全く交流がないこともあるでしょう。

しかし、相続手続きにおいては、必ず相続人全員の実印を押して、印鑑証明書も提出するよう求められます。

では、どうやって連絡先のわからないその人に連絡を取るかというと、「戸籍の附票」という書類が重要な役割を担います。

戸籍の附票には、本籍地や名前、生年月日以外に、そこに本籍がある間の住民票の住所の履歴がすべて掲載されています。文字どおり「戸籍」に関する書類ですので、管轄は本籍地の役所です。

たとえば、連絡先を知らないAさんがいます。Aさんの本籍地はわかっています。この場合は、Aさんの本籍地のある役所から、Aさんの戸籍の附票を取り寄せます。そうすると、Aさんの住所地がバラ→ユリ→ウメと変遷したことと、最新の住所がウメであることがわかります(実際は番地まで記載されています)。

「いや、そもそも住所がわからないのに本籍地なんてわかるわけがない」と思われるかもしれませんが、ご安心ください。相続人を確定させるために亡くなった人の戸籍を出生までさかのぼって取得していきますが、そのなかで、相続人となる人は必ず全員登場してきます。そして、そこには必ず「本籍」の記載がありますので、それを元に、その人の戸籍の「附票」が請求できるのです。

ただし、たとえお互いが相続人同士であっても、相続関係によって取得できる戸籍の範囲には限度がありますので、どうしても取得ができなかった場合は行政書士や司法書士などの専門家に相談してみましょう。それらの資格者は職務を遂行するに際し、業務に関係する範囲で、職権で戸籍などを取得することが可能です。

住所がわかればそこに対してお手紙を送り、相続が開始していること、相続人であることなどを伝え、そこから遺産分割協議が始まります。

今回は、遺産分割協議と、連絡先のわからない相続人の住所を確認する方法についてご紹介しました。次回は代表的な相続財産のひとつである、不動産の名義変更(相続登記)についてお話しします。

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