知的障害+自閉スペクトラム症の長女とイヤイヤ期の次女の育児に奮闘しながら、自閉症育児の悲喜こもごもを発信しているにれ(@nire.oekaki)さん。子どもの成長への不安や悩みを赤裸々に描いていて、大きな反響を呼んでいる。
にれさんが新たに描き下ろした漫画とエッセイを加えた電子書籍「今日もまゆみは飛び跳ねる~自閉症のわが子とともに~」が発売された。
ウォーカープラスではこの電子書籍の中から特に印象的な漫画を、にれさんのエッセイと共にご紹介。日々思い悩みながらもなんとか前に進むママと、確かに成長していく娘の姿を描く、共感必至エピソードをお届けします。
■「わが家の普通」を変えた単独通所
「レスパイトケア」という言葉をご存じでしょうか?
レスパイト(respite)は「小休止、休息」という意味の英語で、レスパイトケアとは、誰かをケアする立場の人が一時的に休息を取れるようにする支援のことをいいます。この「ケアする人のケア」という概念は介護業界に端を発し、近年は育児においても提唱されることが増えつつあるようです。
「まゆみを単独通所させる」という選択はまさにこのレスパイトケアでした。
当時の私は幼稚園へ行かせるような感覚で療育してくれる「単独通所」という選択肢があることを知らなかったのですが、知っていたとしても、3歳に差しかかってもまだまだ赤ちゃんのような振る舞いのまゆみを単独通所させようとは考えなかったように思います。まゆみに手を上げてしまい、自分の限界を感じたのが契機になりました。
不甲斐なさを感じながら開始した単独通所でしたが、いざプリズムの先生方にまゆみを預けてみると、あらゆる物事がスムーズに回り始めました。気軽に外出できるようになり、家事ができるようになり、休む時間が取れるようになり……息もできないほどの閉塞感に満ちていた毎日に大きな風穴が開いたようでした。
いつもならまゆみがグイグイ引っ張ってくれる右手が空いていることにソワソワしましたが、同時に、普段いかにまゆみに時間と労力をかけていたかも自覚できました。まゆみにとっても単独通所が様々な良い変化をもたらしたと感じているため、「わが家にとっての普通」を見直すきっかけにもなったと思います。
当時の私のように、小さな子どもを預けることに罪悪感を抱いてしまう親もいるかもしれません。けれど、休息は誰にとっても必要なものです。ただでさえ育児は大変なものなのに、子どもに特性/障害がある場合はなおさらです。
制度があるということは、それがなかったために困ってきた人たちが大勢いたということで、先達の方々が道を整備してくれたのは私たち後進のために他なりません。実際に利用するうち、「ありがとう、お願いします!」と堂々と利用すればいいんだと私自身も意識が変わりました。
レスパイトケアには、一般的によく聞く児童発達支援や放課後等デイサービスのほかにも、日中一時支援や一時保育、ショートステイやホームヘルプなど、いろいろな形があります。ご家庭に合ったものを利用し、大手を振ってコーヒーでもフラペチーノでも飲みに行ってほしいと思います。そうすることで子どもとの時間を笑顔で過ごせるなら、親が一息つくことも大きな目で見ると育児の一環といえるのではないでしょうか。
療育施設の数や受けられるサービスに地域格差があることは第8回のエッセイでも触れましたが、一ヶ月間に通所できる限度の日数もやはり地域差が大きいようです。中には限度日数の多い自治体に引っ越す人もいるそうで、難しいことは重々承知でもサービスの不均衡が少しでも解消されることを願ってやみません。
もしすぐには開始できない場合も、順番待ちの申し込みをしたり、代替手段の提案を受けたり、相談をしたり、次につながる一歩があるかもしれません。どうかひとりで抱え込まず、しんどい時は「辛い!」と声を上げてほしいと思います。
配信: Walkerplus
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