苦手なことが多く悩む妹。「完璧ではないからこその魅力」は人間とネコの共通点【作者に聞く】

苦手なことが多く悩む妹。「完璧ではないからこその魅力」は人間とネコの共通点【作者に聞く】

「ねこが働く駅」として知られる福島県の会津鉄道・芦ノ牧温泉駅を舞台に、働くねこたちの様子を紹介する「にゃん旅鉄道」。福島中央テレビの情報番組「ゴジてれ Chu!」内で放送されている約1分間の短いコーナーながら、TVerでは4年間で総再生数170万回を突破し、なんと映画も公開された。

「にゃん旅鉄道~さくらの物語~」は、そんな「にゃん旅鉄道」をモチーフにした創作漫画。妹ねこの「さくら」を主人公に、猫たちの日常や実話をもとにしたエピソード、四季折々の美しい風景を、イラストレーターで漫画家のゆきよみさん(@yukiyomi333)が丁寧に描く。

今回は、秋に出現する「苦手なもの」に関するエピソード。さくらはカマキリが苦手。しかし「お兄ちゃんがやっつけてやる!」と言ってくれていた頼もしい兄はもういなくて…。

作者のゆきよみさんに漫画のテーマや、キャラクター造形について聞いてみた。

■「完璧ではないからこその魅力」を描きたい
今回の漫画のテーマは、「苦手なもの」です。さくらはらぶ駅長と違い、駅のパトロールをあまりせず冒険心の少ないタイプだと芦ノ牧温泉駅の皆様から伺いました。そのことを漫画にできたらと以前から温めていたんです。完璧ではないところが私たち人間にも通じるところがあって、これもさくらの魅力の一つだなと感じています。

実はらぶとカマキリのエピソードも駅の皆さんから伺ったもので、秋になるとカマキリとバトルをしていたそうです。「カマキリとのバトル?なんて猫らしいんだ…!」と、ますますらぶ駅長が好きになりました。ちなみに今回のお話には出ていませんが、初代名誉駅長のばすは、ヘビとバトルしたとも伺いました。猫の魅力の一つに「野生らしさ」があると思うのですが、いつもは駅で働いている猫たちが見せる野生の面も出せたら、彼らの魅力がもっと伝わるのかなと思い、描くことにしました。

今回の漫画では、カマキリとリベンジしたがるらぶ駅長と、それを止めるさくらのコマが特にお気に入りです。兄妹で同じものを見ても、こんなにも反応が違う。特に虫に対しては違いが顕著なのではないでしょうか。これは兄がいる私にも心当たりがありますね…(笑)

■もうひとりの兄・ぴーちのキャラクターについて
さくらにはらぶだけでなく、ぴーちという兄もいます。駅にはなかなか来ないレアなキャラです。普段は大人しいけれどボソっとおもしろいことを言うタイプの方っていると思うのですが、ぴーちにはそんなイメージがあります。しかもせっかくおもしろいことを言っているのに、聞き取れないくらいの小さい声だったりする。でも、話してみると趣味も多く話題がたくさんあって、一言がとても深い。このイメージはもしかしたら、芦ノ牧温泉駅の小林駅長から伺った「ぴーちは内向的だけど、変顔が得意」というところからきているのかもしれません。「個性的でとても魅力的な猫」ということをイメージしながら、描いています。

立派に駅長を務め、多くの人から愛されたらぶ。苦手なことが多く、偉大な兄と同じようにはできないと悩むさくらは、今後どのように成長するのだろう。彼女の頑張りと会津鉄道・芦ノ牧温泉駅の美しい風景を、これからも楽しみにしてほしい。

取材・文=石川知京

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