共働きは子育てにプラス? マイナス?

第1回 どうあるべき? 共働き家庭の子育て
共働きは家計にゆとりがでる一方、子育てに十分に時間をかけられないという側面もあります。自分が働くことが子どもにとってマイナスになっていないか、不安を覚えるママも少なくないでしょう。

結局のところ共働きは子育てにプラスなのでしょうか? マイナスなのでしょうか? 1児を育てるワーママで、企業の働き方コンサルティングを担当する、堀江咲智子さん(ワーク・ライフ バランス)に聞きました。

●共働きはメリットだらけ?

ちなみに、堀江さん自身は“共働き賛成派”。その理由は大きく2つあるといいます。ひとつ目は、やはり経済面でのメリット。

「正社員が2回育休を取り、復帰して定年まで働き続ける場合と、お子さんが生まれたタイミングで一旦離職をして、パートタイムで復帰するのとでは、経済的に2億円の差がつくと言われているんです。今の時代、夫だけが働いてその2億円を稼ぐのは難しいですよね。また、共働きだと夫の転職を素直に応援できます。私の主人も何回か転職をして独立したんですが、もし自分が専業主婦で夫から『独立します』って言われたら、反対しただろうなって思います。安定性を求めて、『もうちょっと会社員をやった方がいい』って説得に走っていたかもしれません。でも、自分が働いていれば、多少不安定でも『私の稼ぎでなんとかすればいいか』と思える。妻として、『夫に提供できる選択肢』が増えるじゃないでしょうか」(堀江さん、以下同)

●保育園通いで多様な子育てに触れる

そして、二つ目は精神面。子育てのみに没頭せず、「ママ以外の時間」を持つことで心のバランスを保ち、より子どもに愛情を注げるようになるといいます。

「我が家には三歳の男児がいますが、たとえば『どうやって走ったら靴にこんなに砂が入るんだろう…』などと、ついあきれてしまうこともあります。これが1日中続くと、すごくしんどいだろうなって。でも、仕事をすることによって、母親以外の役割を持つことができる。視野が狭くなり過ぎないという意味で、大きなメリットがあると思います。

仕事が終わる頃には、“子どもに会いたいモード”になって、保育園に迎えにいってギューギューして癒される、それから翌朝仕事に行くという生活は、大変かもしれませんが上手くバランスを取ることさえできれば、精神面でもメリハリがついて生活も充実するのではないでしょうか」

不機嫌モードで長時間をともに過ごすより、限られた時間だとしても愛情をたっぷり注いであげられるほうが、子どもにとっても幸せなことかもしれません。

さらに、働くことでママが陥りがちな“孤独感”が薄れることも、子育てにプラスだといいます。

「子育てだけの生活だと、子どもと1対1で向き合わないといけないので、ママはどんどん孤独になってしまいます。それによって、必要以上に他の子と自分の子を比べたりとか、育児書と比べたりと、少ないサンプルのなかで、比較に走ってしまいがちです」

共働きは子育てにプラス? マイナス?

しかし、保育園に通わせることで子育ての視野も広がる、と堀江さん。

「保育園に通わせると、本当にいろいろな家庭の子どもが集まっていて千差万別。いろんな子どもがいろんな事をして、自由気ままに遊んでいるようだけど、他者との関わりも生まれ始めます。集団の中で、自分の子どもが母親以外の刺激を受けているのはすごく助かるし、私自身も『よその家の子と比べてどうこう』って思わなくて済んでいるのは、多様な育てられ方をしている子どもを見ているので、“正解はないんだな”と思えているからです」

保育園で他者と関わることは、人間関係づくりの入口。子どもの成長を促すという点でも意義深いことといえます。共働きはママのためだけでなく、ある側面においては子どもにとってもメリットが大きいといえそうです。

(取材・文=末吉陽子/やじろべえ)

お話をお聞きした人

堀江咲智子
堀江咲智子
株式会社ワーク・ライフバランス
2012年より株式会社ワーク・ライフバランスにて働き方見直しコンサルタントとして活動。生き生き働ける職場づくりを成果を下げず残業を減らすことを得意とする。自身も1児の母として子育てと仕事を楽しんでいる。
2012年より株式会社ワーク・ライフバランスにて働き方見直しコンサルタントとして活動。生き生き働ける職場づくりを成果を下げず残業を減らすことを得意とする。自身も1児の母として子育てと仕事を楽しんでいる。