古典の魅力を新しいアプローチで国内外へ!若き日本舞踊、和楽器チーム「禮」の想いとは?

古典の魅力を新しいアプローチで国内外へ!若き日本舞踊、和楽器チーム「禮」の想いとは?

古来から伝承されてきた日本の「伝統芸能」。それは日本の誇りであるとともに、敷居が高いと感じる方もいるのでは? 今、古典の魅力をまったく新しいアプローチで国内外に発信する「禮」という日本舞踊、和楽器チームがいる。劇場のほか、ホテルイベントやライブハウスでも公演をおこなう彼らは、なんと全員20代! 彼らの古典にかける熱い想いをインタビューしてきました。

禮のメンバーは日本舞踊・三味線・箏・笛・鳴物の演者で構成されていて、それぞれがすでにプロとして活躍している。今回は、主に舞台の企画・演出を担当する禮のリーダー的存在、日本舞踊家・藤間礼多さん(紫派藤間流)と、同じく日本舞踊家・松本幸才さん(松本流)のお2人に、結成のきっかけや活動の目的、古典の魅力などについて教えてもらった。

幼少期から研鑽を積んだ日本舞踊、
メンバーとの共演から禮・結成に至るまで

画像:日本舞踊家・藤間礼多さん(紫派藤間流)

ーーお2人が日本舞踊を志したきっかけを教えてください

藤間:祖母とスーパー歌舞伎を観に行ったときに宙乗りなどのかっこいい演出に圧倒され、これがやりたい! と家族に伝えたことがきっかけです。そこから多くの方をご紹介いただき、歌舞伎の世界でも少しばかり見習いをし、現在は市川笑三郎丈の元で勉強させていただいております。日本舞踊のほかに三味線・鼓の経験があり、それらが踊りに活きていると思います。時代劇が好きだったり、落語を聞かないと寝られなかったりと幼少期からそういった趣味を持っていましたね。

松本:私は祖母が日本舞踊の師匠(現:日本舞踊「松本流」理事 松本幸延)なので、幼少期から“お稽古”が日常でした。高校生まではピアノやテニスなどほかのこともやっていたのですが、当時から踊ることが素の自分を感じられる時間だと思っていました。お稽古場に行くと自然と気持ちが落ち着いて、癒されるんです。それから、東京藝術大学への進学を機に、本格的に日本舞踊の道に進みました。

ーー禮の結成はどのような流れだったのですか

藤間:3年前にDolce & Gabbanaのイベントで、ステージの企画・演出・出演を任せていただいたことがあり、そこで共演をしたのが禮のメンバーたちでした。

松本:私はその場にはおらず、後日礼多さんからそのステージの話を聞きました。動画で当日の様子を観たときに、古典をリスペクトしながらかっこよくアレンジをしている礼多さんの演出がとても新鮮で衝撃を受けました。一度みんなで集まろうということになり、話をするなかで古典のよさをもっと伝えていきたい、海外にも目を向けていきたいという点で意気投合し結成に至りました。

古典の魅力とその未来について考える。
伝統と革新の狭間で大切していること

画像:日本舞踊家・松本幸才さん(松本流)

ーー禮の公演は、今までにない革新的なことをされていますが、その活動にどのような想いがあるのでしょうか

松本:伝統芸能を志す方・観る方が減っているなかで、このまま古典がなくなってしまったらどうしようという不安があります。だから古典の舞台を大事にしながらも、新しいことにどんどんチャレンジして、もっと多くの方に観て・知ってもらう機会を増やしたいと思っています。

藤間:禮のメンバーは全員、幼少期から古典を十二分にやってきたので、その経験をどう将来に繋げていくかを考えるべきだと思います。先日は、通常の伝統芸能の公演では使われることがないライブハウスで演奏をしました。照明を暗く落としてかっこいい雰囲気を作り、生音の演奏が多い和楽器はライブ感がでるようにマイクで音を出したり、演奏のバックにCGを駆使した映像を流したりと新しいスタイルの公演でした。コンパクトな会場だったので、舞踊もステージ上ではなく映像の中で影絵のようにお見せしました。そのような公演だったため、いつもはいらっしゃらないような若いお客様がとても多く、僕らも驚きました。この活動の目的は公演に来てくれた方が、新しいスタイルの演目を観たときに、これが生まれた根源はなんだろうと古典に興味を持ってくれることです。後日、古典の舞台にも足を運んでくれるようになると嬉しいですね。どんなに新しいことに挑戦しても、最後は「古典」に繋げることを意識しています。

ーーお2人が感じる古典の魅力を教えてください

藤間:古典のすごさは、自分で振り付けを考えるときにいちばん痛感します。歌舞伎が特に参考になるのですが、泣いている、笑っているなどの感情表現を顔の角度や振りひとつで伝えることができるんです。研究すると見えてくる奥深さが古典の魅力だと思います。

松本:私は古典の舞台を観ることが好きですし、読んで知ることも好きです。歌詞を読んだり、題材となった資料を見ていると、当時の流行や暮らしが見えてきて面白いと思います。昔の日本人の“こころ”に触れる感覚です。特に女ごころが題材にされることが多く、恋愛事情など当時はそうだったんだ! と驚くこともあります。

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