もうすぐ1歳になる成猫は、ペットショップでずっと売れ残っていた。もともとは32万円だったが、今では9万円まで値が下がっている。それでも「やだ、かわいくない」「もう、成猫じゃん」と見向きもされない。「どうせ、私にゃんて誰も欲しがらない」とあきらめていたら「この猫をください」とおじさんが言ってきて――?温かくて泣けると「次にくるマンガ大賞 2018」、「でらコミ!」大賞(2020年)、を受賞した、漫画家桜井海さんの「おじさまと猫」を紹介するとともに見どころや制作に込めた想いを聞く。
■お店で売れ残っていた猫とおじさまは「お互いが必要な存在」になる
「私は猫である。もうすぐ1歳ににゃるが、名前はまだ無い」。もうすぐ1歳になる成猫は、ペットショップで売れ残っていた。「やだ、かわいくない」「もう、成猫じゃん」と見向きもされない。「どうせ、私にゃんて誰も欲しがらない」諦めていたとき「この猫をください」と、現れたのは紳士なおじさまだった…!「返品にゃんか嫌だ!」と怯える猫。しかし、おじさまは「うちの子におなり」と、抱き上げた。
「子供たちが大きくなって手がかからなくなったら、猫を飼ってもいい?」そんな妻との約束。その伴侶はもういないけれど、おじさまは約束を果たした。初めは怯えていた猫もおじさまが一人と知り、同じ思いを共感すると「私がいるにゃ」そっと、心を開いた――。
■ちょっと目線を変えるだけで見えてくる優しさがある。そんな部分に気づけるような話を描きたい
――まずは、猫をテーマにした漫画を描こうと思ったきっかけを教えてください。
ペットショップで売れ残る動物たちを見ていると悲しくて、「飼い主さんが現れてほしいな」と思って描いたのが始まりました。子どものころから猫を飼っていたので、とくに好きな猫が主人公になりました。
――読んでいると、とにかくほっこりします!本作を描くうえで、こだわっていることはありますか?
世の中は酷いことや悲しいことで溢れかえっていますが、同時に温かいものもあるはずなんです。ちょっと目線を変えるだけで見えてくる優しさがあるので、そんな部分に気づけるようなお話を描けたらなと思っています。
――ふくまるが、まるまるとしたブサカワなキャラクターになったのはなぜでしょう?また、ふくまるの猫種は何ですか?キャラクターのベースになった猫はいるのでしょうか?
売れ残り設定がブサになった理由のひとつなんですが、一番の理由は私がブサカワが好きなせいでしょう(笑)。ふくまるはブサカワで愛されている猫種、エキゾチックショートヘアなんです。
――2017年のX(旧Twitter)の投稿から始まり、2018年に連載スタート。6年目になりましたが、今まで描いたなかで桜井さんの一番気に入っているシーンがあれば教えてください。
どれも思い入れが強すぎて選びにくいですが、気に入っているというか、印象的なのは「1話目の1コマ目のふて腐れたふくまるの顔ですね」。昔はこんなあきらめた顔をしていたのに、今は幸せいっぱいな顔ばかりで。比べてみると込み上げてくるものがあります。
――2024年6月12日に13巻が発売されました。こちらの見どころは?
神田が義父に電話を掛けるシーンがあるのですが、とても好きな言葉なので読んでいただけるとうれしいです。マリンのために頑張るふくまるたちも、とてもかわいらしいシーンなのでぜひ読んでほしいです。
――最後に読者の方にメッセージをお願いいたします。
いつも読んでくださってありがとうございます!感想がうれしくて、何度も読み返しています。ふくまるとおじさまはこれからも未来に向かって歩んでいくので、見守っていただけたらうれしいです。
おじさまは、出会えたことが幸福だから「ふくまる」と名付けた。そうして、おじさまは、猫グッズやキャットタワーを買いそろえたりと奮闘。仕事道具と猫の戦い、スマホでの撮影など何気ない日々のなかにぬくもりと癒やしが詰め込まれている。「気づいたら泣いてた」「ほっこりしたり涙を流したりしながら、何度も読んでしまう」などの声が届く。
取材協力:桜井海(@sakurai_umi_)
配信: Walkerplus
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