「ヤングケアラー」とは、家事や家族の世話などを日常的に行っている18歳以下の子どものこと。本作の主人公は、小学3年生で洗濯・買い物・料理・掃除など家族の世話を担っている。多くは家族・親族に病気や障害があり、彼らの介護や面倒に忙殺されている状況にある。そのため、早退や遅刻も多く、同世代の子と友好関係を築くことができない。そんなヤングケアラーの実話をフィクションとして描く水谷緑(@mizutanimidori)さんの「私だけ年を取っているみたいだ。ヤングケアラーの再生日記」(文藝春秋)を紹介する。
■自分の心を殺してでも「家族の形」を守りたい…、ヤングケアラーの実情とは?
統合失調症の母親、無関心な父親、認知症の祖父、特別扱いされる弟…。そんな異質な家庭環境に気づき、忌まわしく思いながらも、精神状態は日に日に追い詰められてしまう。主人公「ゆい」がヤングケアラーとして生き、心を殺した自分を再生するまでの物語を描く本作は、2年以上の取材を経た描き下ろし漫画である。
「ヤングケアラーの方々は魅力的で精神年齢が高く、達観した方が多い」
ヤングケアラー当事者から実際に話を聞いた作者の水谷緑さんは、そんな印象を受けたそうだ。彼らの話は、作者自身の持っていた「家族とはこういうもの」という思い込みをなくし、新たな視点から自分の家族を見つめるきっかけにもなったという。
環境が当たり前になって自分がヤングケアラーだと気づかない場合もある、そんな状況の人に対して水谷さんは「困っていることに気づかないことが大半だと思うので難しいが、若い人だったらまず、SNSなどで自分と似た境遇の人や支援団体を見つけるといいのではと思う」とも話してくれた。
小学生の15人に1人という割合で存在するというヤングケアラー。そのリアルで異質な実情を描いた本作は、10代の当事者でも読めるようにすべてルビ(ふりがな)が付いており、ヤングケアラー支援団体などにも記載されている。
取材協力:水谷緑(@mizutanimidori)
配信: Walkerplus
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