よいしかり方とは、「しかるのではなく対話」
ーしかり方はどうですか?
「だめ!」と、大きな声で言われると、子どもの脳はフリーズ状態になります。道路に飛び出したりする緊急事態は別ですよ。そうでなければ、「否定」から入らず、その子の行動をそのまま言葉にしてみてください。
おしょうゆを取ろうとして牛乳のカップをこぼしたら、「何やってんの!」ではなく「おしょうゆを取りたかったんだね」と言う。そして「今この状況になったけど、どうしたらいいと思う?」と、答えを聞く。答えられないくらい小さな子であれば「一緒にふこうか」と。多くの場面において叱ることは必要ではありません。「あなたはこうしたかったんだね」「どうしてそうしたいと思ったの」と対話することが大事です。
ーイライラしていると、そんなに冷静になれない気がします。トレーニングが必要ですか?
はい、練習ですね。24時間目指すのではなく「できるときにやる」というスタンスでいいと思いますよ。ネガティブなところばかりに注目してしまったり、「この子はこうだ」と思うと、そういう事象しか目につかなくなるのって、実は誰でもそうなんです。
ネガティブからポジティブに強制的に自分のマインドをもっていくというのも一つの手です。例えば「3 good things(スリーグッドシングス)」と言って、1日の終わりに、今日あった3つのいいことを家族で一つずつ言い合う。幸せな気持ちになったこと、うれしかったこと。毎日続けることで、相手のいいところや、世の中にあるすてきなことに気づけるようになります。
アクティブリスニング(よい聞き方)について
ー著書「アクティブリスニングでかなえる最高の子育て」にも書かれていますが、子どもの話の聞き方というのも重要なんですよね。
アクティブリスニングは「積極的傾聴」といって、聞き手の価値観や偏見によって批判や否定をしたり、独自の解釈をすることなく、話し手自身の経験を理解しようとすることが求められます。たとえば、「今日はAちゃんが休みだった」と子どもが言い、「Aちゃんがいないとがっかりだね」と返すのは、典型的な「決めつけリスナー」です。子どもの気持ちを想像することは大事ですが、子どもはあったことを単に事実として伝えていることも多く、そこにどんな感情が付随しているかは、子どもにしか分かりません。「Aちゃんお休みだったんだ、どう感じたの?」と質問してみてください。
ーアクティブリスニングができると、子ども自身の自己肯定感、自己効力感が上がりますか。
「自己肯定感」は、自分全体のことを受け入れているのに対して、「自己効力感」というのは、特定のことに対する自分の能力への根拠を指します。例えば「自己肯定感」が低くても、バスケは好きでバスケットボールのシュートに関する「自己効力感」は強いということはあり得ます。
アクティブリスニングをすることで、自己肯定感も自己効力感も高められます。子どもの失敗談や成功談を聞くとき、子どもにとっては「どんな話でもまずは聞いてくれる」という心理的安全な環境があるということが大事です。「試合がこうだったので、こう思った」という子どもの話を一生懸命興味を持って聞くことで、子どもは「自分の考えは間違っていなかったんだな」と思い、そこから生まれる自信が、自己肯定感や自己効力感につながるというわけです。
配信: ぎゅってWeb