若い世代を中心に、じわじわ広がった“JJ”ブーム
永尾真紀さん サントリー株式会社スピリッツ本部LS1部所属。開発から携わった「こだわり酒場のレモンサワーの素」は爆発的大ヒット。産休・育休を経て「ジャスミン焼酎〈茉莉花〉」ブランド担当に就任
発売から20周年を迎えるロングセラー商品ながら、2022年までは、マーケティング活動に注力しているわけではなかったという「ジャスミン焼酎〈茉莉花〉」(以下〈茉莉花〉)。
「売り上げが急に伸び始めたのは2019年頃です。改めてリサーチしたところ、飲食店で考案された〈茉莉花〉をジャスミン茶で割る飲み方が“JJ(ジェージェー)”の愛称で親しまれ、関西や沖縄を中心に口コミでじわじわと広がったようです。JJは10年ほど前から存在したという説もあり、ご自宅でJJを楽しむ方が増えたことがブームにつながったと考えられます」
そこで永尾さんをはじめチームメンバーは、“JJ”をほかの地域の人にも楽しんでもらうべく「サポーター」になることを決意。2024年4月に発売(2024年3月にはコンビニエンスストアで先行発売)された「JJ缶」は「もっと手軽に “JJ”を楽しみたい」というファンの声から生まれた、〈茉莉花〉をジャスミン茶で割った商品で、〈茉莉花〉よりも“JJ”の文字が目立つようにデザイン。飲食店で親しまれてきたJJの味わいを再現しているそう。
「人気の背景には、香りのよさや甘くないことに加えて、炭酸ではないためお腹にたまりにくく、ゆっくり飲んでも味が変わらないなど、いくつかポイントがありました。“JJ缶”は〈茉莉花〉をジャスミン茶で割るだけだから簡単そうに思われがちですが、実は1年以上の時間をかけて開発しました。なかでも茶葉の配合や抽出にはこだわりがあって、香り・旨みやコク・爽やかさと異なる特徴を持つ3種類のジャスミン茶の茶葉を独自でブレンドしているんですよ」
“ボツ”になったお酒を見るたびに、気持ちが引き締まる
“JJ”の他にも楽しみ方がいろいろと紹介される販促ツール
お酒が大好きで、お酒の商品開発やマーケティングを志望してサントリーに入社したという永尾さん。これまでには失敗や悔しい思いをしたことも…。「初めてゼロから開発したお酒は、デザインも中味も完成したものの、残念ながら商品化することはできませんでした。今でもこの商品は“お守り”のような存在で、見るたびにこの時の気持ちを思い出し、初心に立ち返ります」
さまざまな経験を経て、「(企画書や資料は)70点の段階でもいいから早く出す」というマイルールを掲げているそう。
「担当ブランドへのこだわりが強くなればなるほど、ひとりよがりになりがちです。完成度が低い状態で上司や周囲に意見をもらい、“鍛錬”されることで、最終的にみんなでよいものにしていくことを心がけています」
お酒が好きだからこそ、飲む人に寄り添ったお酒を作りたい――そんな思いを込めて開発した「JJ缶」がヒットし、街で実際に手にする人を見かけたときは「本当に嬉しいですね。思わず声をかけたくなりましたが、グッと我慢します(笑)」と微笑む。
配信: OZmall