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災害をもたらす気象現象には様々な種類がありますが、その1つに寒冷渦(かんれいうず)と呼ばれる現象があります。
最近だと2024年5月16日に寒冷渦が通過し、山口県から新潟県にかけての日本海側の一部に暴風警報が発表され、暴風によってケガ人が出る被害も発生しました。また、大気の状態が不安定になったことで落雷やあられを観測した地点もあります。
このように寒冷渦は、時に台風並みの暴風をもたらしたり、落雷やあられ、ひょう、竜巻などの激しい現象をもたらしたりする怖い気象現象です。
また、寒冷渦は台風のように季節が限定される現象ではなく、年中いつでも発生する可能性があります。
そこで今回の記事では、荒天をもたらす寒冷渦の解説や台風との違い、防災のポイントを解説します。
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低気圧の一種である寒冷渦
「寒冷渦」とは、上空に強い寒気を伴っている低気圧の一種です。
寒冷渦は、上空で吹いている偏西風と呼ばれる強い西風が通常の流れから切り離されることによって生じます。
偏西風はときに大きく南北に蛇行しながら吹くことがあり、南北のふり幅が大きくなるとちぎれてしまうことがあります。偏西風が南に蛇行したタイミングでちぎれ、取り残された空気が反時計回りに渦を巻くようになったものが寒冷渦です。
その際、偏西風の流れの北側にあった冷たい空気を閉じ込めてしまうため、上空に強い寒気を伴います。
引用:気象庁「過去の天気図」
引用:気象庁「気象衛星ひまわり」
上の画像は冒頭で紹介した2024年5月16日15時の天気図と気象衛星です。天気図を見ると日本海には低気圧があり、気象衛星を見ると台風のように渦を巻いているのがわかります。
寒冷渦は一般的な温帯低気圧のように前線がなく、形状は台風に近いという特徴があります。
ただし、寒冷渦は主に上空を中心とした低気圧であるため、天気図でははっきり解析されないことも多いです。寿命は2日~4日ほどですが、中には10日経っても消滅しないケースがあります。
台風と寒冷渦との違い
「台風」と「寒冷渦」の大きな違いは温度とメカニズムです。
寒冷渦は冷たい空気に覆われていますが、台風は温かい太平洋で発生することもあり、周辺よりも暖かい空気をまとっています。また、台風は海面から蒸発する水蒸気がもとになって発生した雲が渦を巻くようになって生じるため、寒冷渦とは根本的なメカニズムも異なります。
災害面においては、台風は広範囲にわたって大雨、暴風、高波、高潮などの災害をもたらしやすいのに対し、寒冷渦は落雷、突風、ひょう、局地的大雨などの激しい現象が局地的に起こりやすいのが特徴です。
また、寒冷渦が発達すると台風のような暴風をもたらす場合もあります。さらに寒冷渦は一般的な低気圧と扱いが同じであり、台風のように専門的な予報があるわけではなく、災害対策が遅れやすい点にも注意しなければなりません。
配信: 防災ニッポン