今注目されるナチュラルワインとは?「RAW WINE TOKYO」で日本ワインに出合う

今注目されるナチュラルワインとは?「RAW WINE TOKYO」で日本ワインに出合う

世界中からナチュラルワインの生産者が集まる「RAW WINE TOKYO」が2024年5月12日〜13日に品川天王洲アイルのB&C Hallで開催された。2日間の日程で韓国、台湾、シンガポールなどアジア諸国や、オーストラリア、アメリカ、ヨーロッパから約1600人が来場、イベントを盛り上げた。

「RAW WINE」は無添加、または使用していてもごくわずかな量で作られたナチュラルワインの生産者、醸造家、そして愛好家たちでつくるコミュニティだ。マスター・オブ・ワインのフランス人女性、イザベル・レジェロンが主宰し、ニューヨーク、トロント、ベルリン、パリなど世界中の都市でナチュラルワインフェアを開催している。今回は東京で2日間に渡り「RAW WINE TOKYO」がアジアで初めて開かれた。120以上のワイナリーが出展した会場には多くの人が訪れ、ワイングラスを片手に世界のナチュラルワインを試飲しながら、生産者や醸造家たちと交流していた。

■今、世界中で注目されるナチュラルワイン
クラシックな製法で醸造される一般的なワインに対し、「ナチュラルワイン」と呼ばれるワインが最近では世界的に注目されている。ワイン好きでなくとも、一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。

このナチュラルワインについて、実は製法に明確な定義はない。有機栽培で育てられたブドウを使い、無添加、使用したとしても限りなく少ない添加物で、できるだけ人の手をかけず、自然の力で生み出されるワインのことを「ナチュラルワイン」と呼ぶのが一般的だ。呼び方も自然派ワイン、ナチュールなどさまざまだ。人間がコントロールしすぎない分、品質は気候や環境に影響を受けやすく、その年の1本に生産者の想いがこもったとても繊細なワインが生まれる。まさにそれがナチュラルワインのおもしろさでもある。

■日本ワインの多くがナチュラルワインの製法によって生まれる
ここ数年でワイナリーが急増している日本ワインの世界でも、ナチュラルワインの手法を取り入れる醸造家は多い。今回の「RAW WINE TOKYO」にも、7つの日本ワインのワイナリーが参加。そのうち、特に注目したい2つのワイナリーに話を聞いた。

■GRAPE REPUBLIC(グレープリパブリック)
2017年、山形県南陽市で誕生したワイナリー。耕作放棄地が目立つこのエリアで高品質なブドウの栽培を開始、ワインを生産している。新規就農者を増やすことで地域活性化を実現し、ゆくゆくは南陽市を“ブドウ共和国”ともいえるような一大ワイン産地に育てたいという想いから、この名がつけられた。

風土に合ったブドウのみを栽培し、除草剤や殺虫剤をはじめとする農薬はもちろん、肥料や酸化防止剤なども不使用。また、ワイン造りには欠かせない“種の周囲にある酸”を活用するため、種なしブドウを育てるジベレリン処理も実施しない。補酸、補糖も行わず、さらに酵母は天然のものだけを採用するというこだわりようだ。

「RAW WINE TOKYO」では5種の銘柄を試飲することができた。なかでもおすすめの2銘柄を紹介する。
デラフレスカ2023(Dela Fresca 2023)
デラウェアと、少量のスチューベンを使用した微発泡白ワイン。キャンディ香の中に、バナナを中心としたトロピカルフルーツ、またヨーグルトのような乳酸の香りも感じる。味わいはトロピカルフルーツの印象から、余韻には柑橘の白皮を思わせるようなビターさも。炭酸がしっかりあり、さわやかに楽しめる仕上がり。

ヌメロドゥエ2022(numero due 2022)
山形県南陽市産の自園の有機栽培のブドウを使用。シャインマスカット、デラウェア、ナイアガラ、アルバリーニョを、アンフォラと呼ばれる陶器で発酵・熟成。香りはマスカットのさわやかな香りが鮮烈で、奥行きにセロリの様な香味野菜や白桃を思わせる華やかな印象が混ざる。味わいは色調ともリンクするようなライトなボリューム。フレッシュでみずみずしい果実の甘酸っぱさとアンフォラ由来の滑らかさが感じられる。

今回「RAW WINE TOKYO」に参加したきっかけや、ナチュラルワインに対する考えを聞いた。

――今回「RAW WINE TOKYO」に参加したきっかけは?

主催者様側からご連絡をいただき、出店しました。国内外の素晴らしい生産者の皆さんやインポーター、そしてお客様と交流できることを楽しみに出店しました。

――なぜナチュラルワインなのか?

ナチュラルワインを造りたいというよりも、「南陽市のテロワールを表現したワイン造り」をしたいと思い、極力何も加えず、自然な造りにしています。

――日本ワインのおもしろさは何か?

歴史が浅いことだと思います。制度や慣例などに縛られることなく自由にブドウ栽培、ワイン醸造ができます。 今、日本中でたくさんの造り手が試行錯誤しながらワイン造りに取り組んでいます。 造り手やそのワイン産地の成長がすごいスピードで感じられる。そこも日本ワインのおもしろさですね。

■香月ワインズ(カツキワインズ)
宮崎県綾町にある、小量生産でナチュラルワインに力を入れる家族経営のワイナリー。ブドウ栽培には冷涼で寒暖差のある気候が適しているといわれている。日本ワインの四大産地、山梨県、長野県、山形県、北海道がいずれも日本列島の東に位置しているとおり、ワイナリーといえば寒い地域をイメージしがちだ。そんなイメージを覆すのも日本ワインのおもしろいところ。実は日本ワインのワイナリーは日本全国に分布している。香月ワインズは九州・宮崎でおいしいワインを生み出している。

代表の香月克公さんは、ニュージーランドとドイツで10年間ワイン醸造の基礎を学ぶ。そこで経験した、家族やコミュニティーを基本としたワイン造りを実現するべく、地元である宮崎でワイナリーを立ち上げた。「奇跡のリンゴ」で知られる木村秋則さんに感銘を受け、2013年に化学肥料、殺虫剤、除草剤を一切使わない、持続可能なブドウ栽培を開始。多様な野花、野草、ハーブなどの下草を育てながら、今までこの地域では不可能だといわれていたワイン用品種の無農薬栽培を実現した。収穫から除梗、圧搾、瓶詰まで、すべて手作業。発酵には、ブドウの皮や空気中に存在する野生酵母を使用している。酸化防止剤や清澄剤は不使用だ。

「RAW WINE TOKYO」で試飲することができた2種の銘柄を紹介する。

2023 PETITE PLANETE
ブラックオリンピアという品種を100%使った、辛口微発泡ワイン。色調はわずかに赤みを帯びたイエロー。梨や桃のような、甘い香り。強めに仕込んだ泡が特徴で、口の中で元気に弾け、爽快感を与えてくれる。抜栓後は天然酵母由来の泡によりオリが混ざり合い、コクと旨味がアップ。ほどよく締まった後味に仕上がっている。

2023 AyaTopia 綾トピア
巨峰、ナイアガラ、ポートランドの3種が織りなす、透明感ある辛口白ワイン。色合いは、ほのかに赤みがかったイエロー。香りは、白桃やリンゴ、柑橘を思わせる爽やかなアロマ。口に含むと柑橘系のフレッシュな酸が広がるとともに、程よい苦みも感じられる余韻の長い味わい。発酵由来の泡が心地よく、清涼感あるジューシーな飲み心地。

今回「RAW WINE TOKYO」に参加したきっかけやナチュラルワインに対する考えを聞いた。

――今回「RAW WINE TOKYO」に参加したきっかけは?

「RAW WINE TOKYO」の運営関係者から推薦をしていただき、参加を決めました。
 
――なぜナチュラルワインなのか?

資本主義経済を支えるべく、生産効率重視の生産が大半を占めているのが、世界のワイン業界の現状。そんな中、自然と調和した持続可能なワイン造りを目指したいと思っています。同じものを大量に造るよりも、生産者それぞれの想いの詰まった個性のあるワイン造りが、もっともっと必要だと考えています。
 
――日本ワインのおもしろさは何か?

世界の銘醸地と比べ、雨の多い日本で個性ある生産者がどんどん増加し、数年前に比べると品質も格段に上がってきています。これからさらに素晴らしいワインができ、世界でも注目を集める商品がどんどん登場するでしょう。また、中山間地域など、高齢化が進む町や村の活性化にもつながることから、社会的貢献度の高い、将来性のある産業だと考えています。

ナチュラルワインを造ることを目的としているわけではなく、どちらのワイナリーもワイン造りへの想いを突き詰めた結果、ナチュラルワインにたどり着いたといえるだろう。日本の北と南から、個性豊かな日本ワインを造るワイナリーを紹介した。ぜひ、実際に味わって日本ワインのおもしろさを楽しんでほしい。

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