【漫画】ある日突然家に警察が!?騒音さわぎの中での不思議な出会いと交流に心が温まる「となりの隣のおじいさん」【作者に聞く】

【漫画】ある日突然家に警察が!?騒音さわぎの中での不思議な出会いと交流に心が温まる「となりの隣のおじいさん」【作者に聞く】

SNSで日常や子育てについて漫画で発信しているのり漫(@noriomanga)さん。エレベーターなしの団地の4階に住みながら、育児マンガ100日チャレンジを行ったり、フラフープ100日チャレンジを行ったりしている。

今回は団地に住む近所のおじいさんとの交流を描いた「となりの隣のおじいさん」と、誠実なハローワークの職員さんとの会話を描いた「自称漫画家がハローワークに行った話」をご紹介。のり漫さんにも、漫画を描いたきっかけや、作品の背景について聞いてみた。

■騒音トラブル!?から始まるおじいさんとの出会い。描きたい思い出は山ほど
とある夏の深夜、団地に住むのり漫さん夫婦の家に警察がやってくるという不穏な場面から始まる「となりの隣のおじいさん」。ご近所トラブルの話かと思いきや、おじいさんとの交流に心が温かくなる物語だ。のり慢さんが今回の漫画を描こうと思ったきっかけは何だったのだろうか。

「株式会社ゲンロンが運営する『ひらめき☆マンガ教室』で描いた課題作品なんです。毎月ゲスト講師から課題が出され、このときは武富健治先生からの『あなたのど真ん中を、伝わるように16ページで!』というものでした。実は、おじいさんはこの漫画で描いた出会いから2年後に亡くなっていて、それ以来ずっと描きたいと思っていたのですが行動に移せずにいました。この課題が来たときに『今だ!!』と思い、おじいさんが確かに存在したこと、共に時間を過ごしたことを残したいという一心でペンを執りました」

当時はほかの住人とはあいさつ程度の付き合いで、仲良くなったのはおじいさんが初めてだったという。漫画に描かれた以外にも、おじいさんとの思い出はまだまだたくさんあるそうだ。

「おじいさんとの交流が始まったころと、私の無職モラトリアム期間がちょうど重なり、平日の昼間によくおじいさんのお宅でコーヒーを飲みながらお話ししていました。よく人生の話をしてくれたのですが、それがとにかくおもしろくてノートにメモしたり、録音したりしました。この漫画は連載の第1話のつもりで描いたんです。描きたいことは山ほどあります」

今は団地生活も8年目になり、ご近所付き合いは広がってほかの住人ともよく話をするそうだ。そんなのり漫さんが最近のエピソードを教えてくれた。

「3階の一人暮らしのおばあさんがよく3歳の息子にヤクルトをくれるのですが、この間、息子がヤクルト欲しさにはじめて階段を登れた!という出来事がありました。おばあさんには感謝しきりです。ご近所付き合いって本当にありがたいと思います。何気ない関わりで心がホッとしたり『今日はいい日だったな』って思えたりするのです」

■「正直に生きていいのかも…」気持ちが楽になったハローワークでの出会い
「自称漫画家がハローワークに行った話」は、ハローワークの職員さんとの会話を描いた物語。のり漫さんは大学卒業後10年ほど医療職についていたが、何かを作る仕事がしたいという思いをずっと抱えていたそう。そして漫画に出合ったものの、当時は趣味でするのか漫画家を目指すのか定まらず、まずは医療職以外に転職したいとハローワークへ。そこで、試しに本当に思っていることを伝えてみようと口をついて出たのが「漫画家になりたい」だった。

会話した言葉の数は少なくても、正直な気持ちを決して否定せずアドバイスをくれる職員さんにのり漫さんの気持ちも変化していったそうだ。

「漫画家になりたいなんて言ったらバカにされる、そんなの恥ずかしいという思い込みを壊してくれました。思いに寄り添ってくだったことで、『許可』を得たような気がしたんです。変ですよね。本当は誰の許しも必要ないはずなのに許されないと勝手に思っているなんて。医療職を選んだのも、世間に見栄えのいいように『よきこと、役に立つことをすべきだ』という思い込みもあった気がします。私、本当は何にも役に立たないこと、無駄なこと、くだらないことが大好きなのに、そういう気持ちも押し殺していたんですよね。『許可』を得て正直に生きていいのかも…と、気持ちが楽になった気がしました」

シンプルなタッチで日常の温かい物語を描くのり漫さんの漫画。忘れたくないことを残したいときや、モヤモヤした感情を紐解きたいとき、のり漫さんはペンを握るのだそう。最後に今後の展望について聞いた。

「ハローワークの職員さんに『漫画家になりましたよー!』と書籍を渡しに行けたら最高だと思いますね(笑)。声をかけてくださっている編集者さんがいるので、あとは私の頑張り次第です…!漫画は描かずにはいられないので描き続けると思います。エッセイ漫画家は現実と格闘してこそだと思うので、団地のご近所さんをはじめ、さまざまな人との関わり、夫と息子と向き合うこと、バイト先のお店での奮闘、そして新たな出会いも、日常の一つひとつを大切にそしてすべてをネタに替えていきたいと思っています。まずは、こちらの記事をハローワークの職員さんに見せに行きたいと思っています!」

これからののり漫さんの漫画も楽しみにしたい。

取材・文=松原明子

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