「私の話しました?」怖い話をしていると、突然現れた女性。そして「ああああああああ!」と意味不明な叫び声をあげ始める…しかし、怖いのはそこではなかった!?驚きのホラー展開に5.6万件を超える「いいね」と大きな反響コメントが寄せられているスズキダイチ(@chixida1106)さんの漫画「この話は作り話です 実在の人物、団体、事件とは一切関係ありません」。今回、スズキダイチさんに制作のきっかけや見どころについて話を聞いた。
■怖い話を聞きにいった「レポ漫画」だっだはずが…?
主人公と編集のサカモト氏は、怖い話「百物語サロン」というイベントに向かう。百物語サロンは「自分が怖いと思った話ならなんでも話してよい」というトークイベントだ。2人は「百物語サロン」で語りだした青年の話を聞く。
そこで青年は、はじめに「この話は作り話です」と言った。なぜ「作り話」であることを強調するのか理由を聞くと、以前「私の話しました?」と、話に入ってきた女性がいるからだという。そして、「この話をするとね、来ちゃうんですよ。その女の人」どこからともなく彼女が現れると…。
■「モキュメンタリーを漫画ではどう表現するのか?」に挑戦した実験的な要素の強い漫画
――Xで見かけたのは、1枚目の「この話は作り話です 実在の人物、団体、事件とは一切関係ありません」という文字だったんですよね。ふと見たら、5.6万いいねがついていて思わずクリックしました。
最近Xに投稿される漫画の傾向として、インパクトが強く、印象に残る1ページを最初のポストに載せてサムネイルにするのが流行りで、この漫画もそれに則った次第です。この漫画であれば「この話は作り話です」の注意書きの1ページが一番象徴的だと思いました。ちなみに最初の「この話は作り話です」は最後のものとは違うもので、”作り話”の部分に加工をして違和感を表現しています。
――最初は「単なる怖い話のレポ漫画か」と思いました。でも、こちらもまさかの布石だったと?
そうですね。Xではたくさんのレポ漫画が投稿されています。この漫画も最初にそう思ってもらえていたならば幸いです。
――漫画とホラーの融合「ホラーモキュメンタリー」というそうですね。制作のきっかけを教えてください。
「ホラーモキュメンタリー」は漫画だけではなく、ドキュメンタリーを装ったフィクションのホラー作品のジャンルを指します。逆にホラーモキュメンタリーで話題になるのは、映画などの映像作品や小説などの文章の作品などでした。「では、漫画だったらどう表現するのか?」と考えたのがこの作品を作るきっかけです。
――最初は「ん?」くらいの違和感から始まって「なんだ、なんだ?」となっていく段階がホラー漫画とは違う怖さがありました。制作するうえで、気をつけたこと、ここはポイントなどの制作秘話はありますか?
自分はフェイク作品をつくるうえで、フェイク元のジャンルと大きく離れないように心がけています。この作品では「最初に怖い話を聞きにいったレポ漫画であること」、「ジャンルはホラーであるということ」を明示しました。
――結果的に意図的に制作したものが見事にヒットした、ということでしょうか?
意図はありましたが、前述の通り”モキュメンタリーを漫画ではどう表現するのか?”に挑戦した、実験的な要素の強い漫画だと私は思います。
――もっといろいろなバリエーションができそうですが、今後もホラーモキュメンタリーを制作する予定はありますか?
前作やこの作品を踏まえて新しい作品を作りたいと思っています。短編や単発が多かったので、長編でできないかと考えています。
――そのほかにどのような漫画を描いていますか?
普段は二次創作やパロディ、コメディの漫画が多く、今回のようなホラーはたまに描いています。
本作は「ドキュメンタリーを装ったフィクションのホラー作品」。どこからともなく現れる「私の話しました?」という女の「何がどう怖いのか?」。これは言語化してしまうと、途端に意味をなくしてしまうので、ぜひ読んでその怖さを体感してほしい。
取材協力:スズキダイチ(@chixida1106)
配信: Walkerplus
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