たまたま、事件が起きた
さいき「学校の現場では、『先生が、まさか』『先生が生徒にそんなことをするわけがない』という前提が共有されていると、取材で感じました。最近は、学校での教師による性暴力がニュースになることも多いですが、同じ県内の学校でそんな事件があったという報道を見たら、おそらく『あの学校にはたまたま、悪い教師がいた』と解釈するのではないかと思います」
その見方こそが、加害教師にとって有利となる。
莉生は職員室で、性暴力が現在進行形で起きている可能性を教師たちに訴えた。しかし教師たちはそれを信じないどころか、「同僚をそういう目で見てたってどうなの」と莉生に対して不信感を募らせる。
いじめと性暴力の共通点
さいき「教師を疑うよりも生徒を疑うのが、学校の体質なのかもしれません。悲しいことですが、そんな空気も取材で感じました。生徒の言うことを受け止めたり真に受けたりしたら舐められる、という意識がいき渡っている学校もあるようです」
本作には、早退した生徒のことを“仮病”と決めつけるシーンがある。それと、生徒の性被害を疑い、教師の言い分だけを信じることは、地続きの問題だろう。
さいき「性暴力って、見ようと思わなければ本当に見えないものなんです。現に起きていることを否定するような雰囲気が、学校という場にはあるのでしょう。性暴力だけでなく、いじめを苦に生徒が自死した事件で、校長が『本校にいじめはない』と言い切るコメントは、みなさんも何度も目にしたことがあると思います。『うちの学校にかぎって』は組織防衛の考えからくるものだと思いますが、とても恐ろしいです」
加害行為の責任はすべて、加害者自身にある。しかしそれを実行しやすい環境、継続しやすい環境がなければ、犯行を未然に、あるいは最小限に食い止められるはずだ。
配信: 女子SPA!