開腹されたニンゲンのような造形
「醤油皿できた」。そんなシンプルなつぶやきとともに投稿された1枚の画像が、X(旧ツイッター)で物議をかもしています。一対の男女とおぼしき形をした、開腹され臓器を全て取り出された後のような造形。露出したろっ骨に、血のように注がれた醤油(しょうゆ)……。あまりに生々しい作りに「美しい」「グロテスクだ」とさまざまな感想・意見が寄せられています。
作者は、現代美術作家の山下昇平(@yamashitashohey)さん。造形、イラスト、書籍カバー、舞台美術など広い分野で活動し、作品集も出版している気鋭のアーティストです。
山下さんいわく、作品名は「男女醤油皿」。2024年6月下旬にデザインのスケッチ画像を同じくXに投稿し、以降、制作の過程を画像で紹介しながら7月9日(火)午後、ついに完成作品をアップしお披露目したのでした。
アップ直後から反響はすさまじく、「これはすごい…」「狂気を感じる(褒め言葉)」「リアル過ぎて食欲が失せるほど」「怖いのに美しい」「欲しい」といった肯定的な反応が集まりました。12日(金)11時時点で、“いいね”数は17万件超に達しています。
一方で、「あまりにグロテスクだ」「不快だ」など批判的な意見も寄せられるようになり、外科医や医学部生とみられるアカウントたちからは「解剖したことがある人は、患者さんを思い出して気が滅入る。冒涜的に感じる」との指摘も。
さらに、作品が“女性的”な曲線・表情で表現されていたためか「犬猫をモチーフにしたら非難されるだろうに、女性ならOKと思っている人たちがいるのが許せない」「女性のモノ化、女性軽視だ」との声も上がりました。
作者の山下さんは、
「食べることについて作品を作ることは割とあり、その流れの中で作りました。
昨今、食べ物(原料も含めて)はほとんどのものが、どこかのどなたかが手間暇かけて作ったもので、こちらの支払った対価がまた、その人たちの生活の手助けになっている。そんなことを可視化、体験できるといいなと思って作りました。
直近ですと手術後の説明で身内の内臓を見たことも(制作する一つの契機として)あったのかもしれません」
と、作品の意図を語ります。また自身の作風、作品作りに通底しているものについては、
「よく『別の作家が作ったみたい』と言われるほど作風の違うパターンをいくつか持っているのですが、その狭間に何か生まれないかな? と試行錯誤しています。あまりいいスタンスではない自覚はあるのですが。いつも“中途半端なものが作りたい”と考えています」
と明かしました。
今回の醤油皿についてまた別のユーザーは、「快であれ不快であれ、感情を大きく揺り動かすものは優れた作品。その点でこの作品はすばらしい芸術だ」と批評していました。
(LASISA編集部)
配信: LASISA
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