「彼女が誘ったとか」セカンドレイプが多い理由とは?学校内性暴力を描いた作者と考える<漫画>

「彼女が誘ったとか」セカンドレイプが多い理由とは?学校内性暴力を描いた作者と考える<漫画>

身近な人から「性被害に遭った」と聞かされたときのことを、想像してほしい。最初になんと声をかけるだろうか。喉(のど)まで出かかった言葉を飲み込むこともあるかもしれない。言葉によっては、相手をさらに傷つけかねないからだ。

教師から生徒への性暴力を描くコミック『言えないことをしたのは誰?』(現代書館)。養護教諭・神尾莉生(かみお りお)は、勤務先の公立中学で教師から女子生徒への性暴力が行われていると知る。被害者に寄り添い、加害者を暴こうとする莉生を阻むものがいくつかある。


そのひとつがセカンドレイプーー性暴力被害者に対してかけられる、性暴力の原因が被害者側にもあったとする言説や、被害に遭ったこと自体を疑ったり、被害を矮小化したりする言説だ。

本記事では、同作の下巻から一部を抜粋して抜粋。綿密な取材のうえ本作を描ききった、さいきさんに話をうかがった。











セカンドレイプについて、『言えないことをしたのは誰?』著者のさいきまこさんはこう話す。

さいきまこさん(以下、さいき)「セカンドレイプが多いのは、性被害が軽く考えられているからだと思います。たとえば『犬に噛まれたと思って忘れなさい』も、犬に噛まれたら犬を嫌いになるかもしれないけど、生涯引きずるトラウマになることはそう多くないでしょう。でも性被害によるトラウマは、その後の何年何十年、もしかすると一生影響が出るかもしれないんです」

被害者を非難する、典型的なセカンドレイプ

作中に出てくるセカンドレイプの一部を紹介しよう。

〈あの子に手を出す男がいるとは思えないもの〉

〈どうせ……あの子に何か落ち度があったんでしょ?〉

〈むしろ彼女が誘ったとか〉

さいき「ひどいですよね。でも、性被害の実態を知らないと、こう言っちゃうんだろうとも思います。私も取材をはじめるまで知らないことだらけでした、岸先生と同じです」

岸先生とは、作中のキーパーソンである。

教師から性被害を受けている女子生徒の担任だが、主人公の養護教諭・莉生とともに生徒の親を家庭訪問したとき、生徒に対してきつい言葉を投げつけた。そもそも被害自体を信じていなかったのだが、それと同時に悪気もなかった。

レイプ神話はどこから来た?

本記事で『言えないことをしたのは誰(下)』から抜粋し、掲載したのは、そんな岸先生が自分のなかにある「レイプ神話」に気づくきっかけとなった出来事だ。


さいき「岸先生が思っている『容姿がよくて性的魅力があると、変質者に目をつけられて性暴力に遭う』というのは、レイプ神話のひとつの典型です。私は、レイプ“神話”ってほんと言い得て妙だと思っているんです。ありえないことが、まるで現実であるかのように信じられているんですから」

さいきさんは、「でも私にも染み付いているんですよね」と付け加える。もちろん、筆者にも染みついている。

さいき「この考え、どこからきたの? って思うんです。知らないうちに身に着けていたことは、アンインストールがむずかしい」

作中の岸先生は、「なんで私は誤解なんかしてたの?」と過去を振り返る。多くの女性は、性的いやがらせや性暴力を受けた経験があるため、自身の経験と照らし合わせて気づきやすい傾向がある。

一方、男性はむずかしそうだ。

関連記事: