心がまるごと洗われるような、ちゅらさる海(きれいな海)を背に、福々しい笑顔の大田吉子さん。『90歳おばーのゴキゲンなひとり暮らし 孤独を吹き飛ばして幸せに生きるヒケツ』(KADOKAWA)には、TikTokやInstagramで50万人のフォロワーを持つおばーの日常が綴られています。
「私でよければなんでもやるよ」
沖縄で生まれ育ち、90歳の今も、海や山で遊ぶ大田さんを「おばー、かわいいよ」と撮影したのがお孫さん。
「喜んでくれる人がいると思うとなんだかうれしくなって、俄然はりきってしまう」という大田さんですが、順風満帆な人生を送ってきたわけではありません。
貧しい環境、戦争、結婚、子育て。もちろん、休みなく働いてきました。座右の銘は「私でよければなんでもやるよ」。
苦労や努力を感じさせない、沖縄のかわいいおばー。しなやかな生き方の秘密はどこにあるのでしょうか。
10歳の戦争体験
やんばるの戦(沖縄戦)がはじまったのは昭和20年、アメリカ軍が上陸してきたのです。この時、大田さんはわずか10歳。沖縄が完全降伏するまでの約3ヶ月間、山の中で息を潜めて生活していたといいます。
すぐそばまでアメリカ軍に包囲されているのです。
「山の中で感じた不安と恐怖は、90歳になった今でも忘れることはできません」
この言葉の重みを笑顔に変えたのは、命の尊さを身をもって経験したからではないでしょうか。
戦争が終わってからも、相変わらずの貧乏生活。高校時代から大田さんの職業遍歴がはじまりました。保育士、バスガイド、ラジオ局の電話交換手。
23歳で結婚してからも、子育てをしながら働き続けます。アイスキャンディー店、精肉店、鮮魚店、農業、畜産業、民泊。
家族のため、村の人たちのため、助け合いながら、とにかく動いてきたのでしょう。戦火を潜り抜けた命を、決して無駄にしないで生きてきたのです。
「やればできる、やらなければできない。できないことは、やらなかったこと」
何事にも前向きに、一生懸命働いて、5人の息子さんを大学まで出しました。「夫と私の誇りです」と語りながら、今日も朗らかに笑います。
配信: 女子SPA!