大切な我が子を亡くす体験は、親にとっても、周囲の人にとっても耐え難くつらいものです。
代表の住吉育代さんは、生後8ヶ月で愛娘を亡くした一人。その際に子ども用のガラス仏具を自ら制作したことがきっかけで2010年にガラス仏具専門店「Bee-S」を設立しました。
Bee-Sのオンラインサイトには、可愛らしい色味のガラス仏具や子ども用や分骨用の小さなガラス骨壷、個性豊かなデザインの骨壷カバーなどの写真がたくさん並んでいます。本記事では、Bee-S代表の住吉さんに、自身の経験や今の活動にかける想いについて話を聞きました。
仏具を探すことで娘を亡くした悲しみを受け止めていった
――子ども用の仏具を販売するようになったきっかけについて教えてください。
生後8ヶ月で天国へ旅立った娘のために、子ども用ガラス仏具を制作したことが今の活動につながっています。娘は生まれつきの先天性心疾患を持っていたため、何度も入院し私がお世話していたのですが、生後8ヶ月で亡くなってしまいました。
葬儀ホールで葬儀をしたとき、同じ施設で行われていた他の葬儀は高齢で亡くなった方がほとんどで、8ヶ月の娘の葬儀を行うことに、「なんで私の娘がここにいるんだろう」と強い違和感を抱きました。家に帰ってからも、葬儀業者の方が設置してくれた白い祭壇や仏具を見て、娘の存在が“神様”仏様”のような、遠い存在になってしまったのだと感じ、悲しみが一層強くなったのを覚えています。
この違和感をなんとかしたいという思いから、白い祭壇を娘らしいピンクやお花で飾り、仏具をガラスで作ることを思いつきました。これが今の事業の始まりです。
――ご自身でガラス仏具を作り始めてから、Bee-Sとして販売しようと考えた経緯についても聞かせてください。
ガラス仏具を作り始める前、一度娘らしい仏具を探そうと仏具店に主人と伺ったことがありました。でも、そこにはいわゆる仏教の荘厳なデザインのものしかなく、娘に合うものが見つからず……。主人と一緒に「これは娘には買えないね」と帰ってきました。しかし、家に帰れば白い陶器の骨壺などがあり、早くなんとかしたいと思っていたんです。
そのとき、最初に勤めていたガラスの仕事を思い出し、同期のガラス作家に相談しました。すると「いいよ、一緒に作ろう」と言ってくれて、そこから一緒に作り始めるようになりました。高校生のときから起業することが夢だったこともあり、自分たちで作ったガラス仏具を販売してみようかなと思い、Bee-Sが誕生しました。
――娘さんらしい仏具を揃えることで、当時持っていた悲しみの受け止め方は変わりましたか。
そうですね。娘に洋服を買ってあげるような気持ちで仏具を選び、時にはガラス製品から自分で作っていました。それが結果として、私自身のグリーフケア(死別の悲しみを抱える遺族に寄り添い、立ち直るよう支援すること)になっていたのだと感じています。外に出かけたときにも娘にしてあげられることを考えるようになり、それが少しずつ私の心の支えになっていきました。
ただ、人それぞれ悲しみの受け止め方は違うと思っていて、私のように悲しみのエネルギーが外に向かう人もいれば、家で一人で涙を流し、徐々に受け止めていく人もいると思います。
依頼は、大切な人との思い出を反映したデザインも
――現在、Bee-Sではどのような商品を展開していますか。
仏具や骨壷カバーなど、基本的にはセミオーダーのスタイルで、それぞれのお客さんに合わせた作品を手作りしています。一つひとつがユニークで、同じものがない点が特徴です。
最初のラインナップは、私が娘に買ってあげたいという思いから出発して、それをベースとした作品を提案していました。それに対してお客さんからの要望が増えてきて、今ではさまざまな種類の作品を作っています。
――骨壷カバーも多く展開されています。骨壷カバーに着目した理由はありますか。
仏具をお送りしたお客様からお写真をいただくことも多いのですが、写真を見ていたらかわいいものを揃えているけれど、骨壷カバーだけ空間に馴染んでいないように感じていました。ネットで骨壷カバーについて調べたところ、やはり古風なものしか見つからず。そこで、かわいい骨壷カバーを自分で試行錯誤して制作するようになりました。
――やはり骨壷も故人の存在を感じる大切なものなんですね。
我が子を亡くした方の中には、遺骨を納骨せずに自宅に置いておく親御さんや、自分が亡くなったときに一緒に納骨してほしいという親御さんが多くいます。
親の心境として、大切な我が子を感じられる遺骨を本人が会ったことがないご先祖様と一緒にお墓に入れるのは、寂しい思いをまたさせてしまうと感じることもあります。愛する我が子とずっと生涯一緒にいることを考えると、その人らしい骨壷カバーはとても大切な要素なんです。
配信: 女子SPA!