【ホラー漫画】エレベーターの乗客が豹変、うつろな顔で近づいてくる…日常に潜む闇を描いた短編ホラーにゾッ【作者に訊く】

【ホラー漫画】エレベーターの乗客が豹変、うつろな顔で近づいてくる…日常に潜む闇を描いた短編ホラーにゾッ【作者に訊く】

暑い夏の到来に合わせ、ウォーカープラスでは夏にぴったりのホラー漫画を特集。今回は、柏木大樹(@kasiwagidaiki) さんの創作作品「エレベーター」を紹介する。

■身近な「エレベーター」が逃げ場のない恐怖の密室に…
作者の柏木大樹さんは、SNS上でオリジナルの短編作品を数多く発表する漫画家。お笑いコンビ・土佐兄弟をコミカライズした「とさのたね ~土佐兄弟、あるあるネタができるまで~」を連載するなど商業でも活躍する一方、ファン向けコミュニティの「FANBOX」や「Fantia」ではSNSに投稿した短編漫画の一気読み記事や、限定公開の作品を展開するなどWEBでも精力的に活動している。

柏木さんの作品はあたたかなテイストだけでなく、ゾッとするような恐怖を切り取った短編も数多く、「エレベーター」はその一つだ。

マンションのエレベーターに乗り込んだ女性が扉を閉めようとした矢先、子供を連れた家族が乗り込んでくる。そんなありふれた光景のはずが、突如トラブルが発生。エレベーターが途中で止まってしまったのだ。

女性は非常ボタンに手を伸ばそうとするが、その手を家族連れの一人が腕ずくで制止する。非常事態にも関わらず揃って無表情の家族はエレベーターの四隅に立ち、まるで女性を取り囲んでいるかよう。不気味な状況にうろたえながらも自身の携帯で外部に助けを呼ぼうとするが、家族連れは「あ あ あ」と奇声を上げ出し――、という密室の恐怖を描いた作品だ。

■「読者から安心感を奪えたら」日常風景をベースにしたホラーのほの暗い狙い
そのピンチは幸運にも脱することができた女性だが、真の恐怖はずっと後に待っていた――というストーリーが怖さを倍増させる短編。そんな作品の舞台裏や、漫画を描く思いを柏木大樹さんに訊いた。

――3万件のいいねを集めた「抱っこされてみたい父親のお話」のようなほっこりする作品を描く一方、ホラーやえぐみを感じさせる作品も多く制作するなど幅の広さを感じます。ご自身としては作風をどう捉えていますか?

【柏木大樹】「短編漫画」という大きな括りの中で描いているので、どんな話を描いているときもあまり感覚的には変わりません。ネームやプロットを作らず、行き当たりばったりで描いているので、そのつもりは無かったのに描き終わってみればホラーやバッドエンドになってた、という場合も割とあります。地味だけど色んな色の花が咲いてる花壇だと思って読んで貰えればいいと思います。

――「ネームを作らず行き当たりばったりで」とのことですが、最初に描き始める時はどの程度のアイデアからスタートするのですか?

【柏木大樹】シチュエーションありきで作り始めることが多いです。例えば最近描いた短編漫画だと、「異世界転生させるために自分に死を迫ってくるエージェントがやってくる」というシチュエーションがまず発端としてあり、それを回す人間と場所を用意し、あとは描きながら着地点や見せ所を考える。そんな場合が多いです。

――本作「エレベーター」ではどんなところから?

【柏木大樹】「エレベーター」含むホラー作品群に関しては、日常の中で安心できるシチュエーションの中で最悪なことが起き、読者から安心感を奪えたら、という思惑もあります。

「エレベーター」であれば、子連れのファミリーは、現実なら男と同乗したりするのと比べたら安全な部類の人種のはずですが、今作では全員怪異ということになってます。他にも自宅だったり、お昼寝中だったり、本来安心して過ごせるはずのシチュエーションで悪いことを起こし、読んだ人の日常生活にもささやかな支障が出てくれたらと思いながら描いてます。

――また、柏木さんは「陽」の話も「陰」の話も書くとSNSでつぶやかれていました。それぞれの漫画を描く際の意識に違いはありますか?

【柏木大樹】「陽」を描いてる時も「陰」を描いてるときも、感覚やモチベーションにそれほど差はないのですが、描き終わったあとに登場人物に対して「悪いことをしてしまったな」という気持ちは少し発生しますね。特に死なせてしまった時などは。なので、毎年最後に、その年描いた短編漫画のキャラクター達が楽しく集合してる絵を描いてます、供養も兼ねて。

――SNSを活用した作品発表も長く続けられている柏木さんですが、読者の反響、トレンドの動きなどで意識するポイントの変化があれば教えてください。

【柏木大樹】トレンドやSNSの反応の量はあまり気にしないよう心がけてます。「あれが受けたからそっち方面でまたやろう」、「今のトレンドを取り入れよう」みたいなことをやって良いものができた試しはないし、初心である「自分がそのとき描きたいネタを描く」ということをあくまで大事にしたいと思うので。

それでも承認欲求を抱えた一人の人間なので、伸びれば嬉しいし、あまりにも伸びないと自信がなくなることもありますが。伸びない中でも頂けた反応、いつもいいねをくれたりご支援してくださる方々に感謝し、粛々と次の漫画、次の漫画と描いてます。これを死ぬまで続けられれば幸せだと思います。

取材協力:柏木大樹(@kasiwagidaiki)

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