世の中に当たり前ってない。この取材だって当たり前なことじゃない
――そこで腐らないのが偉いです。
細田「そもそも役者というのは人それぞれ。もちろん負けたくないという思いはあります。ライバル意識だってある。でも僕はほかの人より自分ができると思ったことはないし、基本、自分より芝居がうまい人しかいないと思っている。そこで卑屈にならなかったのは強みかもしれませんが、それは出会いに恵まれているからだと思います。人にしても作品にしても」
――不器用だとのことですが、細田さんは、いつもしっかりしている印象です。合同でお話を聞く際には、わざわざ体の向きを変えて、取材相手の目をまっすぐ見てお話する姿がとても印象に残っています。それは細田さんにとって当たり前なこと、無意識の行動なのでしょうか。
細田「世の中に、当たり前はないと思います。たとえばこうした取材も、わざわざ聞きに来てくださっているんですよね。それって当たり前のことじゃない。それに対して、ひとつの姿勢としてちゃんと向き合ってお答えしたいんです。背もたれに寄りかかって足を組んでとかって、ないですよね。僕はそういうのは、自分として好きじゃないんです」
大きな影響を与えられた出会い
――自分の考えがしっかりあって、分析もできているんですね。
細田「自分を俯瞰で見られるようにはしています。お芝居がどうこうの前に、自分がどういう人間なのか。それから、人の感情というものは、どう変わっていくのか。いま何が必要とされていて、それはなぜ必要とされているのか。そういったことを、自分のなかでちゃんと考えて、答えを持っていたいと思っています」
――そうしたことを考えるようになったきっかけは、何かありますか?
細田「『町田くんの世界』で石井裕也監督と出会ったことだと思います。何かを言われたというより、石井監督と過ごした時間ですね。なぜいま『町田くんの世界』が必要なのか、必要とされているのか。意味や意義、熱量も含めて、石井監督が、そういったことをすごく大切にされているのを、感じられたのがすごく大きかったです」
――最後にあらためて、『七夕の国』のような大作の主演を務めたことへの思いをひと言お願いします。
細田「間違いなく恵まれていると思います。22歳という年齢で、大きなプラットフォームのひとつであるディズニープラスで、CGやVFXをたくさん使った映像のなか、ステキなキャスト、スタッフ、監督のみなさんと一緒にお仕事ができた。しかも真ん中に立たせてもらったというのは、本当に恵まれた経験をしている自信があります。出来上がった作品を、早くみなさんに楽しんでもらいたい気持ちです」
(C)2024 岩明均 / 小学館 / 東映
原作:岩明均「七夕の国」(小学館刊)
『七夕の国』(全10話)はディズニープラス「スター」で独占配信中
【作品概要】
「寄生獣」岩明均の怪作を、『ガンニバル』のディズニープラスが実写化。ある日、ビルや人が、謎の“球体”にまるくエグられた——。この怪事件の真相を追い、役に立たない“超能力”をもつ平凡な大学生ナン丸は閉鎖的なある町を訪れるが、そこで自分がこの町に先祖をもつ “球体を操る能力者”だと知る。町に隠された3つの謎〈季節はずれの七夕祭り 町民だけが見る悪夢 丸神一族の掟〉は何を意味するのか? さらに、巨大な球体を操る男が、ナン丸の運命を大きく狂わせ、すべての謎は一つの衝撃的な答えに導かれていく…。この夏、日常をエグる、不気味な超常ミステリーが始まる。
<取材・文・撮影/望月ふみ>
【望月ふみ】
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi
配信: 女子SPA!
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