どこまでも「読めない」人
寅子と航一は支部長室に移り、改めて対面する。こうして向き合うと、長官室での会話が懐かしく、ちょっとした昔話に花を咲かせるかと思えば、航一はやっぱり「やりづらい」人なのだ。
航一の感情の動きって、ほんとどうなってるのか。寅子が「お休みの日は何を?」と聞くと、「休みの日は」と奇妙な間をおいて「休んでいますね」と答える。取り付く島がない。この人の感情は、いちいちリセットされるのだろうか?
寅子の心の声を代弁する尾野真千子のナレーションが思わず、「相変わらず、いろいろと読めない」とつぶやく。新潟の自動車の交通事件について三条支部分の資料をまとめてもらうために会いに来たのだが、寅子が新潟に赴任したから、ちょっと顔を見に来た感じもある。どこまでも「読めない」人だ。
いつから謎めいた俳優になったのか?
航一の考えていることが「読めない」だけでなく、岡田の演技自体も次にどう来るのか、予測するのが容易でない。あの独特な会話の間合いによって、視聴者をいちいちはぐらかしてくるような演技。
でもそれがやたら心地よく感じてしまう。もっともっとはぐらかしてくれ、岡田君。みたいな感じで。いつからこんなに謎めいた演技をする俳優になったのだろう?
彼の演技が明らかな変節を迎えたのは、第96回アカデミー賞で作品賞にノミネートされた濱口竜介監督作『ドライブ・マイ・カー』(2021年)からだ。同作で、西島秀俊扮する演出家・家福悠介の舞台に出演する人気俳優・高槻耕史を演じた。
一見、さわやかなイケメン俳優という感じだが、車内での長い会話場面では、いきなりこの世の者とは思えない顔をのぞかせ、観客の背筋を凍りつかせた。この人、何かしでかすに違いない。そう思わせる狂気を全身にまとっていた。
配信: 女子SPA!