朝ドラ『虎に翼』34歳俳優の“表情の読めなさ”が気味悪い…アカデミー賞ノミネート作でも発揮していた狂気

朝ドラ『虎に翼』34歳俳優の“表情の読めなさ”が気味悪い…アカデミー賞ノミネート作でも発揮していた狂気

発酵過程の演技を待つこと


 高槻の行動は、観客の想像を遥かに超えるものだった。以来、岡田の演技に目まぐるしいケミストリーが生じている。特に『虎に翼』では、岡田の演技がどんどん発酵してる感じがする。

 ここからどんな味わい深い演技が醸されるのか。航一役を見つめるということは、岡田の発酵過程の演技をじっくり待つことでもある。あるいは、寅子と再会するごとに、いちいち謎の空気感を漂わせながらも、その都度核心部分に迫るワードを吐く航一の言葉を待つことが、とても重要。

 第78回、気まずい関係が続く娘・佐田優未(竹澤咲子)に戦病死した夫・佐田優三(仲野太賀)の思い出話をうまく教えてあげられない寅子が泣き明かした翌朝。支部長室にやって来た航一が、寅子に、「昨夜、泣きましたか?」と聞く。

 そこへどかどか入ってきた弁護士・杉田次郎(田口浩正)からちょっとした貢ぎ物(弁当)を渡され、航一はひたすら「結構です」と頑なな涼しさで言う。同地の古い慣習(悪習)について寅子に気づかせようとサインを送るように見える。待てば待っただけ、それ相応の回答めいたものを提示してくる。

 発酵を続ける岡田将生の身体を借りて、大切な言葉を漏れ聞かせようとする航一のその言葉に傾聴しよう。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu

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