38歳女優の“笑いのツボを押しまくる演技”。夫とのエピソードでも垣間見えた面白さ

38歳女優の“笑いのツボを押しまくる演技”。夫とのエピソードでも垣間見えた面白さ

家庭劇にとって“必要人物”みたいな存在


 中でも秀逸だったのが、公園でパンを食べるために玉木がプレゼントしてくれたベンチを忘れてしまうというもの。どうも忘れっぽい人らしく、やっぱり面白い。一家にひとり必ずこういうキャラクターの人がいたら、間違いなく食卓は、毎日楽しくなるだろう。

 吉田鋼太郎主演の『おいハンサム!!』(東海テレビ、フジテレビ、2022年)でも三人姉妹の長女を演じた。吉田扮する父親のキャラ立ち以上に、木南は好き勝手に、でもかゆいところには手が届きながら、このユニークな家族ドラマの一端を担っていた。

 言わば、家庭劇にとって必要人物みたいな存在。木南がいるところに、快活なファミリートークは、自ずとグルーヴィーに活気づき、百発百中、視聴者を喜劇の世界に招待してくれる。

喜劇のためにAI化

 常にポーカーフェイスを貫いて笑いを誘うスタイルは、チャップリンと同時代の喜劇俳優バスター・キートン的でもある。木南のこの上なく正確な喜劇的特質が理想的な体幹に裏打ちされながら、シャープに打ち出されているのが、出演最新作『ビリオン×スクール』だ。

 山田涼介がカリスマCEO・加賀美零を演じる本作第1話、加賀美グループの新製品発表会でお披露目されるのが、AIスーツというのが何とも。加賀美の秘書・芦沢一花を木南が演じるが、木南の百発百中の演技自体、AI搭載の喜劇俳優スーツでも着ているのではないかと思ってしまうのだから。

 発表会の客席から、CEOが自分の顔を機密にしているのは顔がブサイクだからではないかという囁きを聞き、憤慨する零に対して、一花が、「あぁ、なるほどなるほど、ブサイクって言われたの気にしてるんだ」と言う。

 ここから場面の雰囲気は、一気に木南主導の軽妙なやり取りの応酬になる。ほんと喜劇的間合いのためにAI化されたようにしか見えないくらいなのだが……。

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