プールに入った後、目を洗ってはいけないのは本当?
暑くなり、休日にプールに出掛ける人は多いと思いますが、プールの水が目に入ったときに、目を洗うべきか迷ったことはありませんか。以前であれば、プールに入った後に目を洗うことが推奨されていましたが、現在では、目を洗うとかえって目を傷つける恐れがあるといわれています。
プールに入った後に目を洗うのは、本当に問題がある行為なのでしょうか。もしプールの水が目に入った場合はどうすればよいのでしょうか。医療法人くろき眼科(長崎市)院長で、眼科医の黒木明子さんに聞きました。
目に水が入った場合は軽く洗い流すこと
Q.プールで泳いだ後は、目を洗ってはいけないといわれていますが、本当なのでしょうか。プールの水が目に入った場合はいかがでしょうか。
黒木さん「状況によって異なります。昔はプールサイドに洗眼器があり、プール後に強い水圧の水で目を洗っていた人は多いと思います。しかし、目の表面はとてもデリケートで、水道水で強い水圧で洗うと、目を傷つける恐れがあります。
また、涙には目を守る『ムチン』と呼ばれる大切な成分などが含まれています。そのため、水道水で目を洗ってしまうと、目にとって大切な成分も洗い流してしまうため、目の修復がしにくくなります。水道水にも低濃度の塩素が入っており、頻繁に目を洗うと傷がつきやすくなるため、注意が必要です。
ただし、プールの水が目に入ってしまった場合は、手のひらに水道水をためた後、たまった水の中で目をパチパチと数回まばたきして軽く洗い流してください。プールの水には強い塩素系消毒薬、家庭の製品でいうと漂白剤の成分が含まれており、その水が目の表面に付着すると、角膜や結膜を傷つけて病気の原因となることがあるからです。そして、その傷から細菌が入って角膜潰瘍や結膜炎などの病気を引き起こすことがあります。
また、目の表面を傷つけることで、角膜が乾燥しやすくなり、いわゆるドライアイの症状が出やすくなります。プールに入るときは、ゴーグルを着用して目の中にプールの水が入らない状態にするのが望ましいです」
Q.プールに入った後に目薬を使ってもよいのでしょうか。
黒木さん「プールの後、目薬を使っても問題はありませんが、気付かぬうちに角膜や結膜が傷ついて弱っている可能性があるため、防腐剤が入っていない点眼薬で目を潤すとよいと思います。
また、病気になるのが怖いからという理由で、症状がないのに抗菌点眼薬を使ったり、用途がはっきりしないまま点眼薬を使ったりする人がいますが、漫然と不必要な点眼を繰り返すことで、目に悪影響を及ぼしたり、本当に必要なときに抗菌作用が効かなくなったりすることがあります。はっきりとした目的がないまま、目薬を頻繁に使用するのは避けた方がよいです」
Q.プールが原因で発症する目の病気について、教えてください。プールに入った後、どのような症状が出たときに眼科を受診した方がよいのでしょうか。
黒木さん「先述のように、塩素などの消毒薬が目に付着すると傷がつきやすくなるほか、その傷に細菌などが入ると、角膜潰瘍という重篤な病気を引き起こしやすくなります。また、ドライアイの症状が悪化することもあります。
ウイルス性の結膜炎は、感染力がかなり強いです。現在、多くのプールは消毒薬により殺菌が強化されているため、衛生的に問題ないとは思いますが、仮にプールの水がウイルスで汚染されているようなことがあれば、結膜炎になる可能性があります。
プールに入った後、『目が乾燥する』『目がゴロゴロする』『目が充血する』『目やにが出る』『目が腫れる』などの症状が出たときは、眼科を受診しましょう」
配信: オトナンサー
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