ホラーだけど切ない…「事故で死んだはずの隣のクラスの女子が毎晩化けて出る話」が胸に刺さる【作者に聞く】

ホラーだけど切ない…「事故で死んだはずの隣のクラスの女子が毎晩化けて出る話」が胸に刺さる【作者に聞く】

暑い夏の到来に合わせ、ウォーカープラスでは夏にぴったりのホラー漫画を特集。今回は、漫画家の東洋トタン(@To_Yo_Tutan)さんの創作作品「かたおもい」を紹介する。

高校生・レイナが、同級生で事故死した女子・ミナミにのしかかれる“悪夢”にうなされる場面からはじまる同作。以前同じクラスだったことがあるだけで、ほとんど面識のないミナミが夢に現れることに困惑する。

ミナミの幽霊と思しき存在は無言のままレイナの近くに居続けるだけで、「私、あの子に何かした?」とレイナはその理由に思い悩む。そんなある日、心霊現象が起きて自身のピンチを免れたレイナは、ミナミに助けられたと感じて彼女の墓参へと向かう。そこで、ミナミの霊が何故自分の前に現れたのかに気付き――、というストーリーだ。

東洋トタンさんは、奇妙なきっかけでプロレスラーと身体が入れ替わった主婦を主人公にした『闘う翼に乾杯を。』と、芸人の群像劇を描く『ネタ合わせは喫煙所で』の2作の連載が2024年6月からスタートした漫画家だ。

今回紹介した「かたおもい」は個人制作として描かれ、2022年にWEB上に投稿した短編ホラー作品。X(当時はTwitter)では「事故で死んだはずの隣のクラスの女子が毎晩化けて出る話」というキャプションで投稿され、7000件を超えるいいねが集まるなど反響が寄せられた。作品制作の舞台裏を、作者の東洋トタンさんに聞いた。

■重たい好意の加害性をホラーテイストの作品に

東洋トタンさんによると、「ホラーテイストな作品を作ってみたいな」という思いつきから生まれたという本作「かたおもい」。作中、幽霊のミナミに取り付かれる理由はレイナには分からず、結末で「もしかしたら」という気付きを得るだけと、読者はレイナ同様にミナミの人となりがおぼろげなまま物語が展開される。

「結末がわかるまではただただ薄気味悪い存在にしたかったので、『全然知らない別のクラスの同級生』という最小限の情報に留めたのだと思います」と、ミナミの描き方について振り返る東洋トタンさん。「ミナミはレイナに強い好意を抱いており、自分みたいな人間が関わることは出来ない存在だと思っていた。その想いの強さから、ミナミの死後の魂がレイナの部屋に引き寄せられて姿を現したのだと思います」と、作者の目線からミナミが現れた理由を推察する。

作中、レイナの危機を救うことになったミナミの霊。だが、本作は必ずしもそれを美談としては終わらせない。「ミナミはレイナのことを暴力的な彼氏から守ってくれました。とはいえ、強烈な好意を寄せていて、毎晩自分の寝床に現れた…という事実には、ストーカーのような性的な気持ち悪さがあると思います。『好き』という気持ちは特に創作物においては美化されがちですが、その中には加害性があると思っています」と、クライマックスに至るまでの多面的な見方を教えてくれた。

■「ドロッとしたマイナスの部分」を美しく描きたい

また、作り手として、また受け手としての「ホラー」をどんな風に捉えているかを訊ねると、「作家としても読者としても、人間そのものの怖さを深掘りするような作品に興味があります」という答えが返ってきた。

「ですのでヒトコワ系とか、幽霊とか…ボディホラー系も大好きです!邦画だと『冷たい熱帯魚』や『鉄男』、洋画だとジュリア・デュクルノー監督作品を敬愛しています」

創作で描かれる「怖さ」に関心のある東洋トタンさん。作り手として「先ほど挙げた『鉄男』の監督である塚本晋也さんの作品にはかなり影響を受けていると思います。大好きなので……。漫画だと、押見修造先生に心から憧れています」と、様々な作品・作家から影響も受けているという。最後に、作者として「恐怖を読者に与えるような描写」で意識していることを聞いた。

「本作『かたおもい』に限らず、人間のドロッとしたマイナスの部分……「怒り」「悲しみ」「狂気」をフィクションの中でかっこよく、美しく描ければいいなと思っています」

取材協力:東洋トタン(@To_Yo_Tutan)

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