子どもが“心を閉ざしてしまう”話の聞き方4パターン わが子から宿題が「嫌」と言われたら…どうする?

あなたは普段、子どもの話をどのように聞いていますか? 実は、親の「話の聞き方」によっては、子どもは心を閉ざしてしまう可能性があるようです。

子どもの話、どんなふうに聞いてる?

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 子育て本著者・講演家として活動している私は長年、幼児教室で指導をしていました。言葉が悪いですが、教室にはとても扱いやすい子がいる一方で、「授業料、5倍欲しいです」と言いたくなってしまうほど大変な子どももいました。

 そんなある日、スーパーに買い物に行ったときのことです。

「そんなふうに言ってくれた人、初めてです」

 そのスーパーには偶然、私が苦慮している子が親と一緒に買い物に来ていました。私の姿に、親子は気が付きません。しばらく様子を見ていたのですが、その親子は買い物どころではない状況でした。

 子どもは店内の通路を走り回り、売り物の野菜の葉をちぎったり、買い物かごにどんどんお菓子を入れたりしていました。母親は髪を振り乱し、叱りながらやっとこさ、必要なものを買っていました。そして、子の面倒を見るのに疲れ切っていた様子でした。

 それを見ていた私は母親と目が合ってしまい、バツが悪い状況に。母親は気を取り直す間もなく、私の顔を見て言いました。

「あ! 立石先生、私、もうこの子をここに置き去りにしたくなっちゃうんですよ」と…。

 そこで思わず私も、普段の授業の様子を思い浮かべながら、「そうですよね。落ち着きませんよね。置き去りにしたくなってしまいますよね」とつい、口に出してしまいました。

 子どものことを私は言ったのですが、もしかして母親は「自分が買い物するのに落ち着かない」と解釈してくれたかもしれません。が、それはともかく、親と一緒になって「置き去り」と言ってしまいました。「覆水盆に返らず」のことわざ通り、正直な気持ちを言ってしまったのです。

「しまった!」と思い、私はその母親の顔を恐る恐る見上げると、母親の顔が晴れ晴れしていました。そして、目に涙を浮かべながら、「ありがとうございます。分かってくれて。そんなふうに言ってくれた人、初めてです」と逆に感謝され、私は拍子抜けしてしまいました。この日以降、その母親と信頼関係が深まり、さまざまな話をする関係になっていきました。

 あのとき、「そんなことないですよ。落ち着きがありますよ。◯◯君にもいい面がたくさんありますよ」と言っていたら、母親は「先生は週1回しか接しないから分からないでしょ! 私は24時間、年中無休でこの子を育てているんだから」と思われたかもしれません。そして、それ以降、私に何かを相談することもなかったと思います。

たった一つの「よい話の聞き方」

 このやりとりは、わが子と話をするときにも通ずるのではないかと、私は思っています。

 例えば、子どもが「宿題が多くて嫌になっちゃうよ」と言ったとき。あなたは、次のような聞き方をしていませんか?

・他のことをしながら上の空で聞く
・子どもの話を、ただ“音声”として聞くだけ
・「うん、うん」「はい、はい」とただ言うだけ
・相手の話を全部聞かず、教訓めいたことを言ったり、否定したり、話の腰を折ったりする(例:「宿題やらないとダメでしょ」「やること(宿題)やってから遊びなさい」「皆も宿題やってるんだから」など)

 親がこのような聞き方をすると、子どもは心を閉ざしてしまうのです。

 一方、「よい話の聞き方」は「相手の話を全部聞き終わった後、相手の言った言葉をそのままおうむ返しする」ことです。

 この例の場合、子どもは「宿題をやらない」と言っているわけではありません。「宿題が多くて嫌だ」という気持ちを親に伝えているだけなのです。そのため、親は「宿題が多くて嫌になっちゃったんだね」と繰り返すだけでいいのです。子どもは「親に気持ちを分かってもらえた」と思い、渋々ながらも宿題に取り組むかもしれません。

 子どもが「幼稚園で、◯◯君が私のおもちゃを取った」と言ってきたときはどうでしょう。「わが子がいじめに遭っているのではないか」とエキサイトして、「意地悪されたのね。明日、お母さんから園長先生に注意してもらうから!」と言うのではなく、「そうなんだ、幼稚園で◯◯君がおもちゃ取ったんだ」とおうむ返ししてあげましょう。

 もしかしたら、それを聞いた子どもは「でも、そのおもちゃ、最初◯◯君が使っていたんだよね。でも先生が来て仲直りしたんだ」と、続きを話してくれるかもしれません。子どもの話をきちんと聞いていれば、早合点してクレーマーになってしまい、恥ずかしい思いをすることも避けられるでしょう。

 実は、これらは「傾聴(けいちょう)」という方法です。「きく」は「聞く・聴く」と何種類かの漢字で表せますが、「聞く」はただ音声として耳に入ってくる音を「きく」ことを意味します。これに対し、耳を傾けて相手の話を積極的に「きく」のが「聴く」なのです。

 先述したスーパーでの出来事も、私が母親の言葉をおうむ返しして「置き去りにしたくなりますよね」と言ったことが、たまたま傾聴になったのかもしれません。

「傾聴」の技、子どもとのコミュニケーションにも、ぜひ使ってみてくださいね。

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