事務所退所が意味するところは?
『陰陽師』と『白い巨塔』という2作で軟弱キャラを演じた伊藤からすると、「海猿」シリーズの仙崎大輔役は、紛れもない新境地に違いなかった。でもそれがどこか形作られたイメージに思えたのはなぜだったろう?
事務所退所に踏み切った伊藤が、「今までのキャリアに自信がない」と言うのが、まさに同シリーズ以降、自らに課せられた屈強なキャラクターのイメージのためではなかったのか。その意味では、『悪の教典』(2012年)のサイコパス教師・蓮実聖司役は、どこか屈強さの脆さを象徴していたように思う。
『TOKYO VICE』(WOWOW、2022年)で演じた汚職刑事役は、いかにも前時代的に男臭い役柄だったが、もはや「海猿」の仙崎大輔のような完全なる正義漢ではなかった。
伊藤英明の出演作品とは、イメージとの葛藤そのものでもある。それらを払拭して、まっさらな、風通しがいい自然な状態に一度立ち戻ること。それが今回の事務所退所が意味するところでないかと思うのだが、どうだろう?
<文/加賀谷健>
【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu
配信: 女子SPA!
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