かつては純粋に憧れていた先輩漫画家を、今や自身のゴーストライターに仕立てた後輩。けれど歯車は狂い、再逆転の時を迎え――。WEB発のインディーズ漫画は、今やアマチュアのみならずプロの漫画家も数多く発表するようになった。「日本、ここ行け Walker」グランプリを受賞したぴのこ堂(@pinokodoaonoshu)さんがAmazon Kindleの無料電子書籍などで発表している「Black Lily 黒百合短編集」もそうした作品の一つだ。
女性同士の想いをテーマにした“百合”を題材とした「Black Lily 黒百合短編集」。なかでも、師匠とアシスタントの間柄が逆転し、人気漫画家にのし上がった後輩漫画家と、彼女の先輩アシスタント兼ゴーストライターとして働く先輩漫画家との関係を描く「交換」シリーズは、プロとして長いキャリアを持つぴのこ堂さんゆえの説得力あふれる描写と、互いの強い感情が交錯する二人の姿に引き込まれる作品。「漫画家漫画をいつか描いてみたかった」というぴのこ堂さんに、同作の制作秘話を聞いた。
■どんでん返しのラストに衝撃!漫画家同士の愛憎劇
5ページで完結の「Black Lily 黒百合短編集」。1本目の「瞳」は女子高生の先輩と後輩、2本目の「秘密」はパワハラ上司と気の弱い部下、3本目の「交換」は漫画家とアシスタントという女性同士の愛憎劇を描いた3本の作品となっている。それぞれの作品には「その後」のエピソードも描かれており、短編では描けなかった主人公たちの過去、強い感情などが長編で描かれている。
その中でも漫画家を題材にした「交換」は一番思い入れが強い作品になったというぴのこ堂さん。人気漫画家すみれという誰しもがあこがれるキャラクターと、ドジっ子を演じ油断させ地位をすべて奪ってしまう悪女のナツ。漫画家としての自分が投影された二人の主人公だと明かす。
「同じ漫画家として、些細なことで苦しんだり憎しみを抱いたりするところは、若い頃の自分と重なって複雑な気持ちになります。同時に俯瞰で眺められるようになって、昔の自分を励ましたいという気持ちにもなります」と語ってくれた。
愛が束縛、嫉妬、憎しみに変わりつつも、また愛に戻るような……。そんなラストを描くことができて感無量だと作品について語ってくれたぴのこ堂さん。今後の作品にも注目したい。
取材協力:ぴのこ堂(@pinokodoaonoshu)
配信: Walkerplus
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